YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.87 「みんなはできているのに自分だけできない」危機的状況の脱し方

4月に入ってから、新しい環境に身を置かれている方も多いのではないでしょうか。この時期、レッスンや社員教育の場でも、よく相談されることがあります。「みんなはできているのに、私だけできなくてどうしよう」というお悩みです。

私自身はモデル時代、いつも一番下っ端で、落ちこぼれでした。周りはみんなスタイルがよくて、カッコいい人ばかり。私だけ、当時のマネージャーさんに「大丈夫?」とよく聞かれるほど、頼りなかったのです。ですから、新しい環境に入って、「自分だけできない」と焦る方の気持ちは、とてもよくわかります。今回は、そうした質問にどう答えているのか、お伝えしましょう。

まず、「初めまして」という状況は、後にも先にも一度きりです。初めての環境であれば、最初の1ヶ月は知らないことや、わからないことだらけと捉えていていいのです。そして、わからないことは、素直に「わからない」と言ったほうが得策です。どんなにわずかな疑問でも、「そんなことも知らないの?」という顔をされても、「ごめんなさい。わからないので教えてください」とストレートに聞くようにしましょう。

姿勢も同じですが、何ごとも大切なのは“基本”です。個々の環境によって、“基本”はずいぶん違うもの。自分の勝手な思い込みや判断で、周りとの歯車がかみ合わなくなるよりも、自分が理解していることや考えていることが果たして正しいのか、きちんと確認したほうがいいのです。

実際、わからないことをうやむやにしておくと、1からやり直すことにもなりかねません。うやむやな部分があると、どの過程で何がわからないのか、どう間違ったのかが把握できないので、結局最初からやり直すことになるのです。少しでも疑問点があるなら、その都度「こちらでよろしいでしょうか?」「確認させてください」と伺ってみましょう。

その場に馴染んできたら、周りをよく観察して、わからないことが出てくる度に聞きましょう。とにかく最初の1年くらいは小さな疑問点もそのままにしておかないこと。「とりあえず」やってみるのもナシ。「とりあえず」やるのではなく、「きちんと」「正しく」基本を身に付けていくことが大切です。

中には、人に聞けない方もいらっしゃるでしょう。わからないことをお手洗いに行ったときなどにスマートフォンで検索している方も多いのでは? 大切なのは、疑問は放っておかずに徹底的に調べること。これは自分の力になります。でも、知ったかぶりはよくないですよね。わからないことを「知らない」と言うのはとても勇気がいります。だけど、率直に聞くほうがストレートな正解を得られるし、行き違いも起こらないものです。

誰だって最初は知らないことばかり。案外、質問された側も、「この人は知っていそう」と思われたことがうれしいものです。私自身も姿勢のことを聞かれるのはとてもうれしいですし、「いくらでもどうぞ」という柔軟性を持っていたいと思っていますよ。

実はあなたが質問することで、周りの人たちも聞きやすい雰囲気が生まれます。ささやかな疑問が場の雰囲気や人間関係をよくすることもあるのです。

新しい環境に行くと、最初のうちは覚えることばかりで、いったい何が疑問なのかすら、わからないものです。しかし、そのうち、自分なりに疑問点が見出せるようになります。新たな壁にぶつかって、疑問点を見つけたときこそ、自分自身が成長するチャンス。私は生徒さんに「やることができてよかったね」という話をよくします。疑問点が見つかれば、あとは方法を探すだけ。方法はいくらでもあるのです。

私自身も疑問点が出てきたら、必ずつぶすようにしています。調べてもわからないことは人に聞いて、ひとつずつ解決してきたことで、今の自分があります。疑問点は、揺らぐことのない強固な自分のベースを作ってくれるものなのです。ちなみにモデル時代、「大丈夫?」と心配してくれていたマネージャーさんには今、「あのときは本当にどうなることかと思ったけど、立派になったわね」と言ってもらえるようになりました。

自分の質問の内容がどんどん深くなれば、それは理解が進んで成長できている証拠。ぜひ、疑問点は放っておかないで聞いて、自分自身の成長に繋げてくださいね。