YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.142 その人を魅力的に輝かせる二面性

『尊敬する人は誰ですか?』というのは、面接でよく聞かれる質問ですよね。皆さんはご経験ないでしょうか? 実際にはなんと答えますか?

昔々……私がモデルをしていた頃のオーディション話です。面接のトップバッターだったにもかかわらず、「即、合格!」になり、会議室を出るとき、「君に合う子をこのあと決めるから、ちょっと待ってて!」と言われた経験があります。そのときの採用理由の大半を占めているのでは?と、いまでも思っているのが私が発した「峰不二子」という言葉。オーディションで「憧れの人は誰ですか?」と聞かれた私は、即答で「ルパン三世のヒロイン、峰不二子です!」と。同時に、緊張感でいっぱいだったオーディション会場は大爆笑につつまれ、そのインパクトの大きさと、笑いというポジティブな空気感がオーディションを合格に導いてくれたと思っています。そして、今回のエッセイのテーマはズバリ、「峰不二子」です(笑)。

私の尊敬する女性は、実在する著名人でも有名人でもなく、あの「峰不二子」。メリハリのきいたナイスバディにもアッパレですが、20代から変わることなく、彼女をずっと好きでいる大きな理由は「二面性」を持っているから! ものすごく頭がキレるところも素敵ですが、悪事発覚でお仕置きされたり、キリッとかっこいいいイメージかと思えば、かわいくチャーミングな一面もあったり。天使と悪魔のような相反する部分を持ちつつ、憎めない存在の彼女に魅力を感じています。

私も講師という仕事をしているので、仕事とプライベートのキャラクターをきっちりと分けたいタイプ。「山田先生」になるときは、着るものはブラックで統一。髪をまとめることも多く、低いトーンで講義をするバリキャリ風キャラも意識しています。一方、プライベートのときは「山田先生」になってしまう黒い服は封印して、プリントのブラウスや色ものを身につけるのが定番です。全身ブラックのときにしか会ったことのない生徒さんが、プライベートの私を見たら、イメージがかなり違って戸惑ってしまうはず。でも、ワンパターンしかない自分よりも、オンオフの顔を上手に使い分けができたり、天使と悪魔が共存している人の方が魅力的に感じませんか? 一見、品行方正でおとなしめな人だって、わーっと騒いだり、弾けたい気分の日がきっとあるだろうし、仕事がめちゃくちゃできるバリキャリ女子も、家に帰ると、上下ジャージでビール片手に完全オフモード突入していたり……オンオフの切り替えは、自律神経上でも緊張感を持つ交感神経、リラックスモードの副交感神経が大切なスイッチ。もちろん、自分らしく生きていく上でも光と影があることは素敵だと感じています。

また、「二面性」の近くある「真逆」な面も大切に受け入れるようにしています。「できる自分」だけじゃなく、「できない自分」にもフォーカスを。友人との会話で自分の知らないことがあったとしても、知ったかぶりをせず「それ知らないから教えて」と、素直に言える人でいられることも人として大事にしていること。少しは恥ずかしさも出せるように意識しています。

思考に関しても心がけていることがあって。既存の固定概念にしばられたり、自分の思考に執着するよりも、多方面から物事をとらえられる、考えられる人の方がずっと軽やかで聡明な印象。そして、姿勢や立ち居振る舞いの指導してきた経験から言うと、思考が凝り固まっている人は、実は筋肉も固まりがち。自分の考えや足りない部分も受け入れて、他人の意見にも積極的に耳を傾けられると、全身の力が抜けて筋肉もきっといい表情になるのだと思います。そこを踏まえて、肩こりや反り腰、ガチガチだった筋肉をほぐしたり、伸ばしたり、さまざまなアプローチを続けて手を加えていくと、驚くほど女性らしくしなやかな筋肉に変わっていくのですよ。

12月に入って寒さも本格化して、コートやファーに身をつつむこの時期。ボディメンテをする前に、自分の筋肉を凝り固まらせている固定概念、既成概念の見直しをしてみたら、体にもマインドにもいい変化が表れて、あの峰不二子も顔負けな魅力的な女性に近づけるかもしれませんね。