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Essay エッセイ

Vol.88 モデルにみる思わぬチャンスが来たときの自己アピール法

これまでメンタルと体の状態が密接な関係にあることは、幾度となく、お話してきました。そうした関係もあって、私は生徒さんからさまざまな人生相談をされることが多いです。

たとえば、モデルをしている生徒さんの場合。モデルはオーディションという審査の機会を経て、審査に通ったのちにお仕事をいただくのですが、オーディションというチャンスは突然訪れるものです。人生においてもそうですが、チャンスは突然巡ってくる場合が多いのではないでしょうか。

ある生徒さんは、オーディションで英語力を試される機会がありました。審査員から英語に言い換えるように言われたのですが、途中で言葉に詰まってしまったのです。すべてのオーディションに対して十分な準備ができればいいのですが、なかなかそうもいかないのが現実です。私はこの大ピンチのシチュエーションになったときに、現状とこの先やっていきたいことを率直に言うようすすめました。たとえば「このコンテストをきっかけに、英語や美容を勉強する機会を与えていただきました。私はこれから何をすべきか見つかりました」と言うようにしてもらったのです。

いさぎよく現状を言えば、案外好印象に繋がって、結果的にオーディションにも受かったりするものです。反対に取って付けたような言い訳をすると、よくない印象を持たれてしまうのです。生徒さんには「大丈夫。最初からすべてをできる人はいないから。“今はこうですけど、次にチャンスをください”と言えばいいじゃない」と話しました。今はわからないことが多くても、学ぶ姿勢を見せれば、次に繋がることもあるのです。

私自身も過去に、マイクを持つ仕事のオーディションで、A4用紙5枚に小さな字でびっしり書かれた原稿を20分で暗記して発表するよう言われたことがあります。実は私は暗記が大の苦手。原稿にはさまざまなお茶の効能が書かれていたのですが、読むうちにとても興味深い部分がありました。

私は高校時代に体調を崩して、丸1学期、入院したことがありました。そのときに毎食後、必ず出てきたのがほうじ茶でした。私は「この原稿の中でとても気になった部分があったので、そこを抜粋して発表いたします」と前置きした上で、自分の入院中の実体験を交えて、ほうじ茶の効能を語ったのです。結果はトップの成績で、オーディションに受かることができました。

実はチャンスが来たときに、一番上手くいかなくなるケースは「できません」で終わること。本人がただ「できない」とだけ言ってしまうと、その瞬間に成長の機会は失われ、物事は終わってしまいます。まずは今、できるところまで100%出し切ること。そして、「今はできないけれど、勉強するのでお時間ください」「私がやらなければならないことが見つかり、これからの道しるべになりました。ありがとうございます」の2点を謙虚に言えるかどうかが大切です。また、現状を素直に言うことで、相手に自分がすでに理解していることと、逆にこれから教えていくべきことが明確に伝わるので、その後のリレーションが上手くいくようになるのです。こうしたシチュエーションは、モデルのオーディションに限らず、日常的に起こり得ることではないでしょうか。

会社内での昇進を望む生徒さんに相談されることもあります。たとえば、マネージャーになりたい人の場合なら、なぜマネージャーになりたいのか、今のマネージャーと同等のスキルはあるか、会社にとって自分がマネージャーになることで有利になることは何か、マネージャーになった自分はどう輝いているか、具体的に自分に何ができるかということを考えてもらうようにしています。まず、社会人として、自分に何が求められているかをよく考えることで、今やるべきことが明確に見えてくるのです。面談では、上記のポイントを整理した上で、現状とこれから先やっていきたいことを語るといいでしょう。

いずれも今すぐ取り組める自己アピール法なので、チャンスが舞い込んできたときに、活用してみてください。