YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.103 仕事のシーンでも力を発揮するハイヒール

前回、ハイヒールの意外な利点について、ご紹介したところ、生徒さんからたくさんの声をいただきました。ハイヒールは、仕事のシーンでもすごいパワーを発揮するアイテムだということ。そこで、今回はハイヒールを履くようになって現れた、仕事面での変化の中から、ひとりだけでなく、複数の人から挙がったエピソードを紹介したいと思います。

ある生徒さんは、尊敬する女性上司に「私も昔はハイヒールを履いていたけど、今はつい楽をしてしまう。私も引っぱり出して履いてみようかな」と言われたそうです。生徒さんの装いに触発された、上司が再びハイヒールを履くようになったところ、部内の人たちの身だしなみがきちんとしてきて、だんだんとおしゃれになってきたそうです。部内で影響力のあるリーダーがハイヒールを履いていると、部下も「私も履いてみようかな」と思うもの。たったひとりの身だしなみひとつから、社内の風景は変えていけるのです。

「いつもハイヒールを履いていて、偉いね」
「いつもヒールのある靴を履いていて、姿勢がいいね。印象がいいと、フロアの雰囲気が明るくなるよ」
会社の先輩や上司、目上の方から、こうした声をかけられる生徒さんも多いです。ハイヒールを履いていると、いつも身だしなみに気を配っているように見られるのです。周囲の目上の方だけでなく、ホテルの広い宴会場で行われる会社の総会で、社長から声をかけられたり、大人数が集まる学会で、著名な教授から話しかけられたりする人も少なくありません。

目上の方に好印象を与えているハイヒールは、紺や黒、グレー、グレージュなどの洋服や肌とのなじみがいい色の、表皮やバックスキンなどの光らない素材で、装飾はなく、シンプルで落ち着いた印象を与えるものです。うちの生徒さんは、まず靴を決めてから、服装を考える人が多いので、自然とハイヒールに合った、清潔感のあるファッションを選ぶようになります。

ハイヒールをきっかけに、全体の雰囲気が自然によくなるため、上司から引き立ててもらえる人も多いです。上司に落ち着いた印象を与えられるので、信頼して何でも話してもらえるようになったり、取引先との大事な会議や、ドレスコードのある会合、海外出張に連れて行ってもらえるようになったりします。どこに出しても恥ずかしくない、きちんとした装いなので、本人の印象のみならず、会社のイメージアップにも繋がるのです。

また、希望の部署や職種に配属されたり、次世代の女性リーダーに抜擢され、昇進するなど、多様な栄転を経験する人も多いです。サービス業の人は、お客様からの信頼も篤いので、他社からの引き抜きの誘いが少なくありません。中には上司に昇進の理由を聞くと、「きちんとした身だしなみと姿勢がいい。周りの社員も見習うでしょう」と言われた人もいます。こうして仕事が上手くいっている人たちは、総じて周りとの人間関係も良好です。

生徒さんは元々、自分の好きなハイヒールを履きこなしたい一心で、決して楽なことを選ばず、あきらめずに姿勢や歩き方を改善したり、靴の細やかな調整をしたりして努力してきました。実はハイヒールに関してだけではなく、普段の身だしなみや仕事も、一生懸命取り組まれています。ハイヒールに端を発した、そうした姿勢が周りに伝わり、認められたと言えるのかもしれません。

最後に余談になりますが、私自身も仕事でハイヒールが非常に役に立っていると実感することがあります。実はハイヒールは、子どもたち、特にお姫様に憧れる女の子にも、とても人気です。ブライダルの仕事では、挙式前に限られた時間の中でリハーサルをするのですが、リングやベールを持つ小さなお子さんは、本番前の緊張や眠気から、嫌がって泣き出してしまうことも少なくありません。ところが「いやだ、やりたくない!」と泣きながらも、私のハイヒールに目がくぎづけになっている女の子に話しかけると、意外と私の言うことはすんなり聞いてくれるのです(笑)。お姫様に憧れる子どもたちにとっても、ハイヒールは特別なアイテムなのかもしれませんね。