YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.115 キレイを左右する座りっぱなし時間の活用術

ほとんどの女性が定期的に足を運ぶ美容室。オーダーするメニューによって2~3時間滞在するこの場所で、みなさんは施術中どんなことをしていますか? 雑誌を読む、携帯やタブレットでSNSのチェック、スタッフの方たちと最近の情報について話をするなど、過ごし方はさまざまですよね。

さて私はというと……みなさんの予想通り、じっと座っていません! 足首を上下にパタパタ動かしてみたり、座り方をちょこちょこ変えたりしています。それに加えて、ハンドマッサージを行うのが美容室でのルーティン。荷物を預ける時に、必ずオイルと手袋を持って席に着き、シャンプー台へ移動するとき以外は、押したり、揉んだりオイルでマッサージをしています。30分以上念入りに手元をほぐし、さらに、オイルが肌にしっかりなじんだら、シルクやコットンのグローブを両手にはめて最後まで過ごします。そうすると、手指がとにかくツヤツヤになって、ネイルカラーをしていなくても清潔で透明感のある手元に仕上がります。美容室で必ず行うルーティンなので、「山田さん、細部への徹底ケアがすごいですね!」と毎回言われています。

私にとって座っている時間の、しかもハンズフリーな状態ほど贅沢な時間はないと思っているので、タクシー移動の最中でもこのハンドマッサージは欠かしません。つい先日も、病院の待合室でハンドマッサージをしていたところ、ソーシャルディスタンスで少しだけ離れたお席に座られたご婦人が、私の真似をして手指を揉みはじめました。さらに、その後ろに座られた方、そして私の斜め前に座られていた男性まで、次々と掌を揉み出したのです! さすが病院ですよね。「健康になりたい!」 という願いをもつ方が集まる場所は、体にいいと思った事は次々に行う……といういい現象が。ハンドマッサージの講習をすぐにでもしたくなるほど、最高な空間に立ち会うことができました。当然の事ながら、ハンドマッサージをはじめた方々に、話しかけたりかけられたりはせず、みなさん無言で“揉み揉み”でした(笑)

これと同じようなことが数年前にもあって……。お芝居を観に行った時、周囲にわからない程度、あくまでも控え目に手をマッサージしていたら、母に「落ち着きがないから止めたら?」と言われて。しぶしぶ手を止めたのですが、なんとなんと、私のお隣のご婦人が手をさすり出したのです(驚)。恐るべし、ハンドマッサージの影響力、恐るべし、手すりすりの伝染力!

掌を揉んだり、押したりするなんて、とても地味で年寄りくさい……と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はさまざまな身体のツボにもアプローチ出来るだけでなく、常に視線がいく手指の肌のハリや艶、透明感が増すだけで、自分が一気にブラッシュアップした気分になれて思わず笑顔がこぼれます。

日頃から、『動作は心臓に近いところ(インナーマッスル)から動かす。そうすると、中心軸を意識できてコアが強くなるのと同時に所作が美しく見える』。逆に『マッサージやストレッチは、心臓から遠いところ(手先や足先)からはじめる。それは、血液の流れが一番遠い末端まで血行をよくするため、徐々に心臓に近付けていくことが大事』と、お伝えしています。ですから、レッスンで行う最初の基本ぶらぶらストレッチも、まずは掌をぶらぶらさせて、指の関節まわりからほぐしています。そして、下半身は足首をぶらぶらさせて足裏の重みを使い、足首下全体をゆるめる→膝下ぶらぶらは、膝下の遠心力でふくらはぎを揺らして、固まっている筋肉の繊維を縦へ均等にする→股関節から脚をぶらぶらは、脚の重みで脚全体的に滑らかに整える……だからLessonでは、この順で行うことがベストなのです。

日々の生活を振り返ってみると、座りっぱなし&ハンズフリー状態の時間って以外と多いもの。リモートワークでPCや携帯画面を目にすることが増えた今だからこそ、今日からの隙間時間はスマホをすぐ横に置いて、ちょこちょこマッサージをはじめてみませんか?