YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.13 あえて言います。履きこなせない靴はない!

「ヒールを履くと腰痛になる」「身体が歪む」などなど、メディアではさまざまなネガティブ情報が飛び交います。実際、スニーカーしか履かないというウォーキングの先生も少なくないですし、私も「ヒールは身体によくないのでは」と思っていた時期がありました。

けれど、いろいろ研究を重ね、1年365日(自宅でも)ヒールを履いている今、自信を持って「ヒールは身体に悪くない!」と断言できます。問題はヒールではなく、「間違った履き方」にこそあります。前回、前々回のエッセイでもお話しましたが、ヒールと足が一体化していさえすればいいのです。足にヒールがぴたっと寄り添えば無駄な動きがなくなり、ラクに歩けます。基本は意外にシンプルなんです。足に合ったヒールで歩けば体幹も使えますから、全身をバランスよく整えることができます。

私がここで強く訴えたいのは、「まずはトライすること。そして、考えること」。ヒールを履くと足が痛いからと諦める───それでは何も変わりません。靴のせいにせず「どうやったら履きこなせるか」を考えること。もちろん前回お話したように、足の形に合わないごく一部の靴は諦めなければならない場合がありますが、きちんと合い、正しく履いている靴なら、一日中履いていても疲れることはありません。私は朝から晩まで仕事の間はほとんど立っていますが、むくみを感じることもありません。同じ姿勢を続けずこまめに動いていれば、座りっぱなしよりもはるかに快適に過ごせます。私の生徒さんたちも、ウォーキングを覚えるにつれ歩くのが楽しくなるようで、11センチヒールで1キロ、2キロと歩いてレッスンに見えることもしばしばです。「どうせダメだから」と否定から入らなければ、どんどん可能性が広がります。メディアの情報で耳年増になったり、人から聞きかじった話に振り回されたりするのは、もうおしまいにしませんか?

「諦める」の代わりに皆さんにおすすめしたいのは「己を知る」です。靴の裏を見てください。外側が減っている方は内股ぎみで脚を振り回して歩いているか、靴が緩いかのいずれかです。靴よりも、まず省みるべきは「自分の歩き方」では? 服をチェックするのもいいでしょう。ジャケットをハンガーにかけてみると形が歪んでいたり、パンツを脱ぐと横にあるはずの縫い目が前にずれていたり……。そんな経験をお持ちではないでしょうか? そういったラインの崩れや歪みは、自分の姿勢が生んでいるもの。それを見て見ぬふりをして「ヒールはだめ」「パンツは似合わない」なんて諦めるのは、ただのブスな言い訳です。美しいと感じるヒール靴や憧れの服があるのなら、決して諦めないこと。そこから健康とキレイが始まるのです。

私が行っているウォーキングレッスンでも、皆さん最初こそ戸惑いますが「ヒールでラクに歩ける」ことを諦めさえしなければ大丈夫。美しいハイヒールを軽快に履きこなし、憧れていたブランドを着ているときの表情の、きらきらと輝いていること! 「痛みがなくなる」とか「疲れなくなる」というのも素晴らしいけれど、それは「マイナスがなくなった」状態ですよね。憧れていたものを着こなせれば、さらにハッピーなはず。諦めず、憧れのものとうまく付き合う方法を研究してください。履けないヒールも、着られない服も、ないのですから。