YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.134 これまでの人生で1番欲しかったもの。手に入れたもの。

生徒さんからよく聞かれる事のひとつに『先生、欲しいものはありますか?』と。さて、皆さんはいかがですか? お金? マンション? ハイブランドのバッグ? パートナー? 仕事? 人それぞれ欲しいものは違うと思いますが、これらは自分で努力すれば、手に入るものだと思っています。

例えば、お金やハイブランドのバッグが欲しかったら、年収が上がる職種に転職やダブルワークも。いらないものをフリマアプリを活用して売って、お金を生み出す方法もありますよね。マンションなど高額なものなら資産運用も視野に。また素敵な彼氏や素晴らしい仕事が欲しいなら、それに見合うように、ボディメイクやブラッシュアップすることが大切。磨きをかければ知人に紹介してもらえたり、様々なアプローチ方法はありそうですね。諦めずにやれることを続けていけば、理想の相手や仕事にも出会うことはできると思います。人脈なども同じで、お近づきになりたい方々がどのような場所にいるのか? 自分の身近な人で、繋がりそうな人はいないかを徹底的にリサーチ。それを踏まえて、傾向と対策を練れば、無理かもと思っていたコネクションまで手にすることは可能ですよね。

さて、私が昔からずっと欲しかったものは、どう頑張っても、どう戦略を練っても手にすることができないものでした……それは『身長』。私の165.5cmという身長はモデルとして小さすぎて、自分が望んでいた仕事にはなかなか届きませんでした。父が仕事関係で持って帰ってきた『JJ』を小学生の頃から愛読し、ファッションが大好きになって、そこに登場するファッションモデルのように、スタイルの良い大人になりたいと夢見ていたのですが、現実は思い通りにはいかなくて。でも、欲しかったものが手に入らなくても、そのように見せる事は出来る!と気がついてからは、努力は惜しみませんでした。10cmヒールはその当時から今も変わらない、私のパートナーに。

オーディションや仕事でも、自前のパンプスが許される時は、誰よりも高いハイヒールを履いていましたし、違和感を感じさせないように、衣装とのバランスや歩き方も工夫しました。当時は10cmヒールでかっこよく歩くことしか考えていなかったかも(笑)。そんな中で一生忘れられない失敗談も。SATCのキャリーのようにランウェイで転びはしなかったけれど、ショーのウォーキング中に大切なハイヒールの片方が脱げてしまったのです。一瞬慌てましたが、ヒールをランウェイに置き去りにしたまま歩き続けました。何もなかったような顔をしていたら、誰にも気づかれずにバックヤードに戻ってこれた……という笑い話。ブライダルレッスンでもよく話す私の鉄板ネタです。

現役時代の独学や簡易的な講義で行ってきたボディメイクやウォーキングは、気合いと根性を積み重ねた結果、体を壊すことに。責任感だけは強かったのでモデルの仕事を見直し、医学ドクターやスポーツドクターの立場からも、自分の体の事、筋肉やその動かし方のことを深く、正確に学ぶことにシフト! 自分がいいと思って信じて行っていたことが、実は真逆の結果を生んでいることが判明した時には、あまりのショックで後悔さえもできなかったほどでした。ひとしきり落ち込んだ後は、全てを入れ換えようと、これまでの思い込みと不要な気合いを捨てる事を決意!体をイチから作り直しました。

その経験を経て、いつの間にか正しく美しいウォーキングを指導する講師に。ランウェイに靴を置いてきた経験のある私が、歩き方の指導者になるなんて、人生は何が起こるかわかりませんね。

身長にコンプレックスがあったおかげで、自分に足りないものを美しくリカバリーできるハイヒールがパートナーに。誰もが憧れるヒールをいつでも優雅にかっこよく身に付けられるなんて、こんなに幸せなことはありません。身長165.5cmという私でないと受け取ることができなかった、特別なご褒美かもしれませんね。若いときに欲しかった自身の身長とは、ほんの少し違いますが、思っていたよりもずっとずっと、素敵な高さが手に入りました! ハイヒールという、この素晴らしいアイテムが体の一部になったのですから。

ちなみに今、私の欲しい物は……二人三脚しているハイヒールを手放すことのない、健康なBODYです。皆さん、コツコツとヒールウォーク、今後もご一緒くださいね。