YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.17 花嫁に捧ぐ、ドレスより大事な姿勢の話

私の仕事は、企業研修のほか、意識の高い方々のプライベートレッスン、モデルさんのウォーキング指導など多岐にわたります。そして、携わる幸せをしみじみ感じるお仕事のひとつが、ブライダルに関わるもの。一生に一度のシーンを美しく見せるお仕事はプレッシャーもありますが、それを上回るやりがいと喜びを感じています。今回は6月ということで、そんなブライダルのお話です(ただし、「写真を撮られるとき」がテーマですから、ブライダルの予定がない方にも、すでに済ませた方にも、必ず役に立ちます!)

結婚式を挙げた経験のある方ならきっと、「お式のときには、もうクタクタ」というのにご記憶があるのではないでしょうか。会場を決め、ドレスを選び、皆様に招待状をお送りして……という式に至るプロセスは、それは大変なもの。ひとつずつクリアしていくと、新郎新婦はお式の頃には疲労困憊。「とにかく無事に済ませようね」となりがちです。でも、お式でお世話になった方々に見ていただくわけですし、写真はのちのちまで残ります。そんな皆さんの印象を、そして写真に撮ったときの美しさを決めるのは、やはり「姿勢」なんです。どこを見られているのか、どう振る舞えばキレイなのか。ちょっと指導するだけで新郎新婦がぐんと輝き出すコツは、どこにあるのでしょうか。

1つは「骨盤を立てる」ということ。ブライダルに限らず、皆さんにはまず「お尻の穴を真下に向けること」とお伝えしています。お尻の穴が下に向くと骨盤が立ち、その上に、上体が乗りやすくなるんですね。そうすると安定しますから、ハイヒールでも颯爽と歩けます。また、肩と肩の間が開きやすくなるので、背中のラインが美しくなります。左右の肩甲骨の間が手のひら1個分あいていなければ、というのはドレスを着るときの鉄則。すらりと細く、それでいてバストが美しく見える姿勢です。

骨盤が立ったら、そのまま「腰骨から歩く」ようにします。猫背になりがちな方も、これだけでスッと頭が起きてきます。特に花嫁さんは、初めてのドレスで自信がないから、つい足下を見てしまいがち。そうすると顔も暗く、姿勢も悪く、さらにはドレスの裾が3センチくらい下がってしまうんですね。あつらえたドレスでも、まるで借りてきたもののように見えてしまいます。腰骨から歩くと、皆さん「こんなに頭が後ろなんですね!」と驚かれますが、簡単に姿勢がよく見えるテクニックなので、ぜひ身につけてください。

また、「腰骨から歩く」もう1つのメリットは、ドレスを蹴らなくてすむこと。ドレスメーカーですら「ドレスの裾を蹴って歩いてください」と指導するところがあるのですが、これは誤り。骨盤が立ち、腰骨から前へと進めばドレスの裾は常に足よりはるか前にありますから、蹴る必要はないのです。無理にドレスの裾を蹴ろうとして体が「く」の字に曲がったり、下っ腹が突き出ている花嫁さんを見ると、どうしてメーカーが教えてあげないのかしら、と悲しくなります。

こういったコツをマスターすると、写真に写ったときの美しさもぐんとアップします。特に、ウエディングではゲストの目線は八割型「下から新郎新婦を見上げる」形になります。特に多いのが、後ろ斜め45度から見られるケース。座っているゲストの横を通ったり、また高砂に上がったり、確かに「下から/斜めから撮られる」が多いですよね。下から見ている方には、新郎新婦の上体が1センチ前に傾いただけでも老けた印象を与えてしまいます。

私のブライダルレッスンでは、このほかにグローブの外し方などの所作やエスコート方法など細かいコツをたくさんお伝えしますが、要となるのは「骨盤を立てる」と「腰骨から歩く」の2つ。これをマスターすれば、ブライダルでも日常でも、はるかに美しく、若々しい印象を与えられます。

せっかく準備したウエディングなのに、写真を見て「こんなはずじゃなかった」とならないよう、最後の仕上げに「姿勢」を頑張ってください。そして、一生に一度の、最高に美しい花嫁さんになりましょう!