レッスンや研修でウォーキングを指導していると、皆さんからたくさんの質問をいただきます。その中でも多いのが「バッグをどうやって持つんですか?」というもの。確かに、日常生活では手ぶらより、バッグを持っての移動がほとんどですよね。ウォーキングを学んで実践するには、そういった普段の生活にきちんと落とし込んでいく必要があります。今回は、そんな「バッグの持ち方」がテーマです。
「どうやってバッグを持つのですか?」と聞かれた場合、まず皆さんのバッグをお借りします。そうすると驚くのが、バッグのハンドル(持ち手)の長さ。必ずといっていいほど、皆さん長いハンドルがお好きなんです。でも、私は可能な限り、ハンドルを短く調整します。
なぜなら、ハンドルが長ければ長いほど、荷物は重く感じるものだから。試しに同じ荷物を手に下げ、次に肩に掛けてみてください。どちらが重く感じるか、よくわかるのではないでしょうか。ハンドルは調整できるのなら短めにしますし、手にもつよりも肩にかける。イメージとしては「肩甲骨に乗せる」感じです。荷物は「心臓に近いところ」で持つほうが、重さを感じないですむんですね。
実は、これは荷物だけに限ったことではありません。たとえば手で行う作業も同じこと。パソコンのマウスひとつ動かすにも、手だけでちまちま動かすより、腕全体を使ったほうが実は疲れにくい。ペンでものを書くと手が疲れるという方は、手首より先だけで必死に書いていることが多いんです。この理論は、日常のさまざまなシーンで応用できます。たとえば赤ちゃんやペットを抱っこするなら、自分のバストのあたりに赤ちゃんやペットのお尻がくるようにすると、いちばん軽く感じる。バッグも同じことで、「手で持つ」のではなく、「肩甲骨にのせて、上半身全体で重みを受け止める」ようにすることで、より軽やかに持つことができるんです。
バッグの持ち方のコツの2つめは、「肘を真後ろに向ける」こと。自分の正面を0時の方向としたら、ちょうど6時の方向に肘を向けるわけです。そうすると、自ずと前に落ちていた肩が開くんです。肩は、上から見たときに180度に開いているのが理想。肘を後ろに向けると肩が開くので、内肩を防げるんです。
レッスンにいらっしゃる生徒さんたちはよく猫背を気にされますが、姿勢のプロからすると、自覚のない内肩も大問題です。それを防ぐ「肘を後ろに向ける」という動作は、バッグを持つときだけでなく、あらゆるシーンで意識していただきたいもの。パソコンをするときも、食事をいただくときも、肘を6時の方向に向けるだけで肩が開き、姿勢が美しくなるんです。
「私はなで肩だから、肩にバッグをかけても落ちてしまうんです」という方がときどきいらっしゃいますが、問題はなで肩ではなく、肩が内側に落ちてしまっていることにあります。「肘を後ろ」と意識するだけでバッグが落ちなくなりますから、ぜひ今日から実践してください。
それから、ちょうどパーティシーズンですから、最後にクラッチバッグの持ち方をご紹介しましょう。皆さんよく手首をクイッと曲げて持ちますが、それでは腕が短く見えるしせっかくのバッグが隠れてしまいます。クラッチバッグを持つときは、親指と人差し指をVの字にして、上からつかむようにしましょう。残り3本の指は添える程度で構いません。鏡で正面から見ると、親指と人差し指しか見えないようなポーズです。このほうが手がスッと長く見え、はるかにエレガントな印象になります。
バッグをわきにはさむ場合は、斜めにするのがおすすめ。前が少し高く、後ろが下がるようにすると美しくきまります。
たかがバッグと侮ることなかれ。歩いているときには必ずといっていいほど携えているバッグを正しく持てば、姿勢がより美しくなること間違いなしです。