YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.30 「フラットな自分」を、知っていますか?

前回「睡眠で痩せる」というお話をして反響をいただきました。生徒さん30人と「毎日9時間眠る実験」を行った結果、肌がキレイになったり痩せたり……という嬉しい結果が続々とあった、というご報告でした。今回はその続きとして、もっと素晴らしい変化───睡眠がメンタルに及ぼす影響についてお話します。

毎日9時間眠る、という突拍子もない目標に付き合ってくれた生徒さんには、さまざまな変化がありました。その中で、全員が口を揃えていたのが「イライラしなくなる」という心の変化でした。いつもだったらカチンときていた些細なことも笑ってやり過ごせるようになる、というのです。気持ちが穏やかになり、人のことも自分のことも許してあげられるようになる、と。これはいちばん大きな、ポジティブな変化でした。

考えてみれば、9時間も眠るためには日中の活動をものすごく効率的にこなさなければならないですよね。そうすると、怒る時間やイライラする時間なんてないんです。イラッとくるような出来事も、「あなたのことなんて構っていられないわ」と流せちゃう。すると、ふと「流してしまったほうが、自分にとっても快適!」ということに気づくんです。感情的になる時間がなくなるから、冷静に決断だけができる。その解放感たるや、とても気持ちいいしなんともハッピー! 気分はいいし、やりたいことはどんどんこなせて頭の中がすっきりするんです。まるで絡まったネックレスがほどけていくように、心も頭も快適になる。たっぷり眠ることでいい循環が生まれるんだなあ、と心の底から実感できます。

「9時間眠る」実験が終わりましたので(ちなみに、そのあと「4時間睡眠」実験もしたのですが、肌も荒れるしイライラするしで、ものの数日で実験は終了しました)、今は生徒さんたちそれぞれが、好きなリズムで睡眠をとっています。けれど、一度「9時間眠る清々しさ」を味わってしまった人は、睡眠時間をきちんと確保するために頑張るんですね。「私はショートスリーパーだから、1日4時間眠れば大丈夫です」なんて言っていた生徒さんも、「4時間で平気と思っていたなんて、感覚が麻痺していたとしか思えない!」と、7時間くらいは確保しているよう。また、「痩せたいから」とがむしゃらにジムに行き、仕事をばりばりこなし毎日3〜4時間睡眠でいた生徒さんも、今は7時間睡眠でしなやかな美ボディをキープしています。運動を頑張るよりも前に、余計な筋肉を落とし、生活のムダをなくすことに気づいたんですね。9時間睡眠を経験するって、これほど生活や価値観を変えてしまう出来事なんです。

考えてみれば、年に一度は家を大掃除する方がたくさんいますよね。同じように、心と体もリセットしてあげるのってとても大切。そして、人間にとっての最大のリセットは「睡眠」なんです。まずは、慣れて麻痺してしまった疲れに、気づきましょう。そして、心と体をフラットにして、動ける状態にしましょう。体のすみずみまで軽くて、どのようにでも動ける状態の心地よさを、一度味わってみましょう。

いい仕事をするためにも、美しくなるためにも、まずはフラットになることが肝心。ちゃんと休めている人こそが、なりたい自分を手に入れる。9時間眠ってみると、それに気づけるはずです。