YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.39 開かれた体で、マインドもオープンに!

毎日仕事でたくさんの方にお目にかかりますが、初対面の方からしばしば「山田先生って、すごく明るいんですね」と言われることがあります。立場上“先生”と呼ばれてしまうので、皆さん生真面目でビシッとした人だと思っていらっしゃるようなんです。でも、私はどちらかといえば逆かもしれません。

もちろん研修やレッスンの内容に妥協はしません。生徒さんに求めるレベルはとても高いし、厳しさをもって接しているという自負もあります。けれど、レッスンを通じて常に意識しているのは、何よりもまず楽しんでいただくこと。ですからお仕事時間のほとんどを私は笑顔で過ごしていますし、生徒さんも、大いに笑ったり驚いたりしています。一方的にお話するのではなく、会話を交わして、体験して、たくさんの気づきと笑顔を携えて帰っていただきたい、といつも思っています。それに、生徒さんが笑顔になって帰っていくレッスンは、私自身もとても楽しい! たくさんのエネルギーをいただく大切な時間だなと日々感謝しています。

生徒さんたちはとても明るい顔になって帰っていきますが、それはレッスンそのものの楽しさだけが理由ではありません。何度も申し上げているように、日本人のほとんどは首ががくんと前に落ちた、いわゆる猫背の姿勢になってしまっています。その状態で歩いていると、自分の足元や地面ばかりが視界に入ってきませんか? 1時間レッスンを受けていただくだけでも、頭が背骨の上に乗った正しい姿勢に戻りますから、ぱあっと視界が広がります。体をガチガチに固めながらうつむいて歩くのと、肩や腰に負担をかけず広い視界で歩くのとでは、快適さが何倍も違うんです。気功の世界では“自分の目で見渡せる範囲まで、その人の意識は広がる”なんて言い方をしますが、それもむべなるかな。視界が広いと自ずと表情がリラックスしますし、気持ちまで明るくなります。

それだけではありません。鎧のようにガチガチになって頑張っていた肩や首、背中は、正しい姿勢になるとムダな力が抜けてきます。筋肉が柔らかくなりますから呼吸もラクになりますし、体温だって上がります。これは伸びやかなメンタルを育てる最高の環境なんですね。実際に、ストレスを強く感じている方には、呼吸が浅かったり体温が低いケースが多いと言われています。姿勢とメンタルのどちらが先で悪化するのかは人それぞれですが、体を緩めてあげることで心までオープンになるというのはきわめて理に適っているんです。

ウォーキングや姿勢の指導というと、“見た目の話”と思われる方も多いようですがとんでもない。毎日の姿勢や歩き方を作っているのも、結局はその方のマインドであり、自分の体をどう認識しているかという意識です。ガチガチに固めた体で自分を守ってヘトヘトになるのか、それともリラックスした体でオープンに、楽しく過ごしていくのかは、見た目だけでなくその方の生き方そのものに関わります。それに、「気持ちをラクにして」と言われると難しいけれど、姿勢を整えてゆったり呼吸するのは練習すれば誰にでもできるもの。体をオープンにして、心もオープンにしてみませんか?