YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.40 女子はやっぱり姫が好き!

研修や講演をさせていただくことも多いけれど、私の仕事の基本は個人の方のウォーキングレッスン。一対一で担当させていただくとやはり成果が出やすいし、生徒さんのお悩みにもじっくり向き合える、本当に楽しい時間です。下はお受験を控えた3歳から、上はお洒落好きな90歳まで、いらっしゃる方の年代はさまざま。

でも、そうやってたくさんの生徒さんを見ていると「女性はプリンセスが大好きなんだなあ」と思わされる機会が少なくありません。キッズクラスではディズニーのプリンセスグッズをよく目にしますし、大人の方からディズニーランド&シーのお土産をいただくことも。ディズニー的なハッピーエンドのプリンセスは、何歳になっても女性にとって永遠の憧れなんですね。

そして、そんなプリンセスの対極にある女性像といえば「女王様」でしょう。自信に満ちあふれ、はっきりと主張し、堂々とした立ち居振る舞いで周囲の人々を従わせていく。プリンセスとは真逆ですが、自立した格好いい女性のイメージですよね。見ていると、ばりばりと仕事をしている女性にはやはり女王様タイプが多いように感じます。私自身も20代にモデルをしていた頃は、ぽっちゃりした体型や顔の丸さをカバーしようと、黒いものを好んで着たり、縦のラインを強調するコーディネイトを選んでいました。ウォーキングを指導する立場になってからも「先生らしくしよう」と語尾を止める強い口調を選んだり、きりりと振る舞ったり。プライベートはともかく、物事を前へと進めていく仕事のシーンでは「女王様」キャラはとても役立ってくれます。

ただ、こういった「女王様キャラ」があまりにも板についてしまうと、所作がエレガントではなくなってしまう危険があります。そして実際に、女王様タイプの人を見ていると、関節もすごく硬くて動きがガサツに見えますし、足音もガンガン響いているんですね。これはいただけません。キャラとしての女王様自体が悪いわけではありませんが、所作が強すぎるとちっともエレガントに見えなくなってしまうのです。

これに対し、プリンセスタイプの所作はすべてにおいて柔軟性があります。筋肉も動きもしなやかで、足音も静か。私はウエディングを控えた方の指導もよくさせていただいていますが、新婦の理想のイメージはまさにこのプリンセス。しなやかにおじぎをして、足音を立てずに柔らかく動く女性はエレガントな印象を与えるんですね。

もちろん、プリンセスもやり過ぎはNG。行き過ぎると媚びて下品に見えますから、シンプルに留めるところと柔らかくしなるところのバランスが重要です。ふっくらとした柔らかい印象の女性なら女王様タイプの凛とした姿勢を取り入れていただきたいし、「私ってきつい印象に見られがちなの」なんて方はプリンセスを意識してカーヴィなラインの服を着たり、所作をゆるやかにするのがおすすめです。自分のタイプによって、あるいはシーンによって2つのタイプを使い分けたりほどよくミックスさせるのも面白いですね。

私自身はといえば「先生らしく振る舞おう」と女王様タイプの所作を意識してきましたが、ここ数年で少しプリンセスを取り入れるようになりました。というのも、ふと「チャーミングなおばあちゃんになりたいな。そして可愛気のある人でありたいな」と思ったから。30代の頃は「何でも完璧にできなくちゃ」と肩肘を張っていたのが、年齢を重ねることで少し余裕が出てきたのかもしれません。何でも引き受けるのではなくできないことは素直に「できない」と言えるのが人間らしくていいと思うようになりましたし、吟味することで仕事や人間関係がさらに充実した、という実感もあります。女王様タイプで頑張るのもいいけれど、ほどほどにプリンセスを取り入れよう、というのがここ数年の自分の結論です。

媚びるのはまっぴらですが、何歳になってもほどよい可愛気は持っていたいもの。心に潜んでいるプリンセスへの憧れを思い出して、しなやかに振る舞ってみませんか?