YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.41 今、いちばん好きな言葉───「準備する」の効能

以前、「毎日、10時間眠る!」という課題を生徒さんにも自分にも課したことがありました。最初は無謀と思われたチャレンジですが、人間って面白いもので、真剣に取り組もうとするとあれこれ工夫するんですね。その課題を生徒さんとシェアしたのは半年以上前ですが、それ以来、皆さんたっぷり眠るための知恵を身につけ、10時間とは言わないまでもしっかり睡眠を毎日実践してくれています。

そして、この課題に取り組んだ私が得た、嬉しい副産物があります。それは「バンバン準備をするマインド」。請求書を早く作成する、資料を前倒しで用意する……。こういった「準備」ができているとミスも格段に減りますし、生活にも心にも余裕が生まれます。あらかじめ前倒しで物事を進めているから、仕事で「いけない、アレを忘れていた!」なんてことは皆無。

それに、「準備ができている人」は心にも余裕が生まれます。たとえばテストだって、しっかり準備できていれば怖いことはないですよね。ここぞという舞台でアスリートが実力を発揮できるのも、せっせとトレーニングに励むという「準備」が、自信や落ち着きを与えてくれるから。仕事で新しいクライアントに会うときも、初めての相手とデートするときも、「準備万端の自分」がいれば、焦らず慌てず、ゆったりとした気持ちで臨めます。

そしてさらに嬉しいことに、準備できている人のもとには、多くのチャンスが訪れます。たとえばこんな具合に。

個人レッスンのときに、生徒さんから「キレイなボディになって、彼氏を作る!」なんて宣言されることがあります。そこで私は聞きます。「じゃあ、今、彼氏にプールに誘われたらどうする?」と。急なお誘いを「今日はちょっと……」と断ってしまうのか、「行きます!」と言えるのか、その違いは大きいですよね。「彼氏が欲しい」というなら、やはりそれなりの準備は必要です。あなたのお部屋は、いつボーイフレンドが来ても大丈夫なくらいにキレイですか? ぱぱっと料理を作れる自分でいますか? 何も準備できていないのに「彼が欲しい」では、うまくいきません。ちゃんと準備している人は、ボディもお部屋もそれなりに調っています。けれど「明日でいいや」の人は、ボディもお部屋も「明日でいいや」なだらしなさが現れてしまうんです。

そして───逆説的に聞こえるかもしれませんが───準備ができている人は「今の体(部屋、精神、仕事…etc)」が通過地点である、ということをよくわかっています。毎日コツコツ積み重ねている「準備」という財産があるから、それを続けることでもっと上へ、もっと先へと進む自分をイメージできるんです。だから、「今日がベスト」はありえない。今日よりキレイな明日、明日よりキレイな明後日が待っているんです。

私の個人レッスンに、カッコよく素敵な80代の生徒さんがいらっしゃいます。彼女は「いつ死んでもいいように」と常に身の周りをキレイにしています。ご自身の出で立ちも考え方も、そしておそらくご自宅や人間関係も、余計なものは持ち込まない。その姿はシンプルでとても格好いいし、見た目もムダがなくて美しいんですね。「準備する」という行為は人にこれほどの余裕や美しさを与えてくれるんだ、とお会いするたび惚れ惚れします。

「準備」はただのお膳立てではありません。毎日を丁寧に生き、明日の自分をもっと輝かせてくれるプロセスです。さて、あなたは何を準備しますか?