YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.43 一生ストイックでいきますか?

毎年のことですが、この時期になると「夏に思い切りやってしまった人」とそうでない人の差がくっきりと現れます。もちろんダイエットの話です。食事制限をした人って、如実にそれが顔に現れるんですね。
炭水化物を抜いたとかお酒を抜いたとか、頑張って1ヵ月に3キロ以上落とした人は、顔がシワっぽくなるのでわかります。最近ではこういったストイックなダイエットを、男の子もガツンとやるんですね。食事を思い切り減らしたり我流で走り込んだり、という極端な方をちらほら見かけます。

その人たちのその後はというと……もちろん、維持できないんです。ずっと一生ストイックにやっていける人ならいいのかもしれませんが、普通は無理です。
というのも、「痩せる」が通過点ではなく、目標になってしまっているから。痩せるという目標を達成するとその上がないので、徐々に戻っていってしまうんです。そして「あのダイエットはダメだったけど、次は…」と、ほかのダイエットにトライするわけです。炭水化物抜き、スムージー生活、酵素ダイエットなど、数々のダイエットが流行るのにはこんな理由があります。

そういう方を見かけるたびに、どこを目指しているのかしら……と思ってしまいます。「痩せる」が目標でいいのでしょうか? 美しくて快適な体というのは、3キロ痩せたからOKというものではないですよね。
それに、特定の食品を極端に制限するダイエットは、後で反動がきます。

私の知っている方で、徹底した炭水化物抜きダイエットをなさっている方がいます。その方はご褒美として、年に1回はラーメンを食べるのを自分に許しているんだそうです。ところが、その後が大変! 普段食べなれないものを体に入れると、次の日にはきゅっと体重が増えているんです。
大好きだったものを断つと、次に食べたときに脳は必死で取り込もうとするから太りやすくなるんですね。そうやって反動が出てしまうより、「いろいろなものを食べても消化できる体」であるほうが、快適だとは思いませんか?

もちろんそのためには、自分の体の声をきちんと聞く必要があります。
私は先日、焼きそばと炒飯を食べました。ダブルの炭水化物ですが、男子生徒さんのレッスンが続いた日で、クタクタになってエネルギーを欲していたんですね。そういうとき、私は案外我慢しないんです。当然のことですが、体がずしんと重くなります。ここからが大切!
食べたいものを食べたら、きちんと消化しなければ。さっそく私は歩き始めました。翌日のための牛乳を求めて遠くのスーパーまでてくてく歩きました。お腹がこなれて重たさが消え、ほどよい疲れで眠くなるまで。

こういうとき、皆さんはどうしていますか? 「お腹いっぱいになって寝ちゃうんですよ」なんて言う方がいらっしゃいますが、論外です。好きなものをお腹いっぱい食べて、ノックアウトされてベッドに倒れ込んでいるわけですよね。明らかに、満腹中枢がおかしくなっている。内臓を痛めつけているし、体の循環も悪くなる一方です。

それなのに、こういう方に限ってダイエット欲はあるので「毎日かなり歩いているのに痩せないんですよね」とか「朝はスムージーだけなんだけれど」「いつもは炭水化物を抜いてるんですよ」なんておっしゃいますが、それでは絶対に痩せません。外側重心のままで歩いても、満腹中枢が壊れながら食事制限をしても、それはただの気休め。まずはひとつひとつ、基本を丁寧にやっていかなければ。

体作りは、一時期の流行やステイタスで行うものではありません。単に友人との会話のネタにしたいのならそれも結構ですが、真剣に美しくて快適なボディを作りたいのなら、ベーシックなことを見直さなければ。
普段の姿勢は? 食事は? 体のどこに問題が? さあ、鏡の前に立って、自分を見直してみましょう!