YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.42 デニム&ニットが、究極のお洒落?

まだ暑さまっただ中ですが、メディアには早くも秋のファッション情報がちらほら。どうやら、今年の後半はざっくりとしたニットやデニムなど、カジュアルなものがトレンドの主役に躍り出るようです。たとえばエミリオ・プッチがボヘミアン調のケープを発表していたり、アレキサンダーワンも構築的なニットをモデルに着せていました。

こういったゆったりニットとカジュアルなパンツの組み合わせだと、「体のラインがカバーされるから」とつい油断してしまいがち。でも、実は着ている人のスタイルを如実に反映する、とても難しいアイテムなんです。ゆったりしたニットこそ、着こなすために美しい姿勢が求められる理由をご説明しましょう。

たとえば猫背の人がゆったりとしたニットを着ると、背中の真ん中部分だけが上がってしまいます。ジャケットなどでも同じことなのですが、柔らかい素材のニットだとはっきりと上がってしまうので目立つんですね。その結果、首から肩にかけての縫い目が前に落ちてしまう。正面から見たときにこの縫い目がわかると、とたんにだらしない印象になります。肩と肩をしっかりと180度に保って胸を開き、縫い目を上に合わせてから着るのがコツです。

また、「美しいシワ」も着こなしを見るときのポイントになります。猫背でお腹の筋肉がユルユルだと、その部分に横のシワが入りますよね(洋服だけでなく、体にも刻まれてしまうのでご注意!)。でも、「横のシワ」が入っているとおデブな印象になるのは、皆さん想像がつくのではないでしょうか。背筋がピシッとしていれば、みぞおちから腰にかけて「ハの字シワ」が入るはず。
この「ハの字シワ」は、実は肩にも現れます。腕のつけ根から外に向かって「ハの字シワ」が出ていればOKなのですが、肩が前に落ちている人は「逆V字シワ」が出てしまうのです(私のプロフィール写真を見ていただければわかるはず)。背中が丸くなっていないか、肩が前に落ちていないか、「基本姿勢」でチェックしてみましょう。

ボトムスにも同様に、いいシワとダメなシワがあります。膝がピンと伸びきってしまっている人は、膝部分に横一直線のシワが入るとご存知でしたか? 立っているときにちゃんと重心が内側にあり、膝のお皿が前を向いていると膝にV字のシワが入るんです。

こういった「シワによる着こなしチェック」を、一般の方が意識して行っているわけではありません。姿勢を研究し、ウォーキングを教えるとき、生徒さんに「こんなシワが入らないよう、自分の姿をチェックして」と指導するために私が利用しているチェック項目です。
でも、お洋服のシワって実は無意識に「この人はだらしないな」「カジュアルだけど、格好いい!」と相手に抱く印象に一役買っているんです。

とある雑誌の取材で正しい姿勢とウォーキングをイラストにおこしてもらったときも、イラストレーターさんから「もっとわかりやすく描きたいんです!」とリクエストがあり、正しいシワを描き加えていただいたところ、ぐっとわかりやすく美しい姿勢に見えたことがあります。お洋服のシワってそれほどに重要で、アニメや漫画で「これがキレイな姿勢」と印象づける重要な線なんです。

この「正しい姿勢によるシワ」が入っていればファストファッションでもメゾンのお洋服なみに格好よく見せることができます。逆に、超高級ブランドものでも、姿勢が悪ければ安っぽく見えてしまう。それほどに姿勢は美しさやお洒落の決め手になっているんです。

だから、この秋のお洒落は「姿勢で格好よく見せる」にトライする絶好のチャンス。凝ったデザインやデコラティブなアイテムとは違い、カジュアルはごまかしがききません。ニットやデニムをお洒落にこなすのに必要なのは、凛とした姿勢です。さて、あなたのボディは“準備”ができていますか?