YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.51 おしゃれをする、その前に。

私は最近、ジェルネイルをやめました。自分の爪がだいぶ傷んでしまい、「こうやって隠してブスになるより、地のキレイでいきたい」と思ったから。
思い立ったら行動が早いので、ネイルと爪の健康に関して少し学びました。自分でケアをしようと決めたので、甘皮をとったりヤスリをかけたり、ベースコートを塗ったり。そんなお手入れをすきま時間にちょこちょこ取り入れて整えていました。いい状態になるまで、1年くらいかかったかなと思います。

1日の時間は限られていますから、どうやってすきま時間を捻出するかは大きなテーマです。甘皮を取るなら、お風呂に入ったついでに。ベースコートを塗るのはもっぱら、ヘアサロンでケアをしてもらっている時間になりました。

さて、いつものようにヘアサロンでベースコートを塗っていたら、新人の子に「おしゃれですね」と声をかけられました。そこでつい「これ、おしゃれじゃないのよ。身だしなみなのよ」と返して、私のそういう性格を知っているスタッフと大笑い。そして、おしゃれと身だしなみの違いについて話しました。

身だしなみとおしゃれは、紙一重のところにあります。でも、この違いって重要。甘皮も取らずにネイルを塗っている?————アウト。せっせとメイクしているけれど、その道具が汚れているのもアウト。素敵なハイヒールを履いていると思ったら、靴底に「これは革製品です」なんてシールがそのままになっているのもアウトですよね。これはすべて、大切な身だしなみです。

ところが、身だしなみをおろそかにしておしゃれをしたがる人の多いこと! ベーシックなお手入れをせずにおしゃれをしても、清潔感が損なわれるだけ。肌が荒れてるのにメイクを頑張ったり、ゆるんだお腹のままトレンドの服を着ても、痛々しく見えてしまいますよね。別に豪奢なおしゃれでなくても、きちんとお手入れをしてあれば美しく見えるはずなのに。おしゃれしようという気持ちが裏目に出て、むしろ格好悪く見えてしまっているんです。

この時期になると社員教育のお仕事が増えるのですが、そこでお教えするのも身だしなみのことばかり。ネイルでいえば、お手入れはマスト。ただ、鮮やかな色を塗ったりラメをのせたりするのは企業によってはNG。薄いピンクやベージュなど、あくまでも上品な清潔感がポイントです。「キレイなネイルですね」と褒められるのは、相手の目線がネイルにクローズアップされている証拠。ネイリストさんや美容にまつわるお仕事の方にのみ有効です。そうでない方が褒められるなら、「キレイな手ですね」のほうが美しい!

これはボディにも当てはまります。姿勢が悪いままトレンドの服を着ても「あの人、服に着られているな」というのが伝わるだけ。痩せたいとヨガやエクササイズをしても、もとの姿勢が悪ければ歪みがさらに強くなりやすいですね。根本の姿勢や健康を意識している人は「痩せたからキレイな服を着たくなる」と思うし、おしゃれ好きな人は「キレイな服が着たいから痩せる!」と思うものなのです。

もちろん私にも、「おしゃれをしてナンボ」と思っていた若い頃があります。けれど社会的な責任が大きくなってくるにつれて、身だしなみさえきちんとしていれば十分と思うようになりました。そして、体でいえば「正しい姿勢」は身だしなみです。これさえきちんとしていれば、ファストファッションを着ても十分に格好いい。もちろんおしゃれだって、ぴたっとフィットします。

トレンドの服に袖を通す、その前に。あなたの身だしなみ、大丈夫ですか?