YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.53 「まぁ、いっか」の落とし穴 ~キレイになれる人の口グセ、なれない人の口グセ~

大企業の新入社員や新郎新婦さんの立ち居振る舞い、アスリートやモデルのコンディショニング。多岐に渡る私の仕事の中でも、キッズからシニアまで、通常のマンツーマンウォーキングレッスンはその軸になるものです。

週に1度、月に1度、または1年に1度。みなさんがメンテナンスをしに来られるレッスンは、1回70分。最初にストレッチをしながら体の状態を把握して、強張っている関節や筋肉があればほぐし、可動域を広げます。関節の正しい位置を確認して、前回の内容を復習した後、個々人に応じた内容に移行する……というのが基本の流れ。それに加え、レッスンを5回終えるごとに5回分の復習をする、というシステムがあって、その理由は1枚のカウンセリングシートに、5回分のレッスンが収まる仕立てになっているから。(たまたまA4の用紙に5回の記入がベストだっただけ・笑)

このシートには1人1人の体の状態や課題、レッスンの進捗といったことに加えて遅刻や変更、キャンセルといった、いわば“レッスンマナー”についても書き込まれます。うちに通ってくださる生徒さんたちはモチベーションが高く、社会的なマナーもきちんとしてらっしゃる方々ばかりなので、ほとんどキャンセルや遅刻はありません。ただ、厳しい企業研修を任される立場からか、レッスンマナーをそれとは別にチェックしています。

おもしろいのは、1枚のカウンセリングシートに遅刻も変更もキャンセルもない方は、レッスン内容のレベルが確実に上がっていく、ということ。レッスンマナーレベルが高い方は、クエスチョンをそのままにしないで、納得いくまで質問される方が多いんです。さらに、レッスンとレッスンの合間に疑問に思うことがあれば、溜め込まずにメールをしてくる。そういう方はレッスンが途中で滞らず、スムーズに次へ進んでいけます。一方で「次の機会に聞けばいいか」「まぁ、いっか」と少しでも疑問を残したままにしてしまう方は、その場はすんなり終わっても、長い目で見ると進みが遅いという傾向があります。

そう、今回注目していただきたいのはこの「まぁ、いっか」という言葉。レッスンに限らず美容や健康、仕事、人間関係、すべてにおいて危険なキーワードで、「とりあえず」と並んで私の嫌いな2大ワードのひとつです(笑)。

相手に迷惑がかかるから、という遠慮の気持ちから生まれることもありますが、大抵はちょっとしたことを面倒に思って、という場合が圧倒的に多いですよね。心を楽にしてくれる便利な言葉のようだけど、美にとっては大きな落とし穴!

なぜなら、ささいなことを「まぁ、いっか」と済ませてしまう人は、自分の体に対しても「まぁ、いっか」と等閑にしてしまうから。「ちょっと咳が出るけど…まぁ、いっか」「ランチを食べそびれたけど…まぁ、いっか」。自分の体のことはついつい最後にしてしまいがちですが、それが積み重なると人間的にも “まぁ、いっかな人”になってしまって、いつしか周りの人たちからも大切に扱われなくなってしまいます。

例えば、服のボタン付け。疲れているけど、「よし! やっちゃおう」。仕事で帰りが遅くなり、すぐに寝たいけれど、「よし! その前に体を伸ばそう」。それぞれはほんの1ミリのがんばりで、1日1ミリがんばったとしたら、10日でようやく1センチ。でも、確かに上に向かって進んでいる。それが365日、5年、10年と続けられたら、どうなるでしょう。逆に、その1ミリのがんばりを「まぁ、いっか」で済ませてしまったら……?

1日、たった1つでいいんです。ちょっと面倒なことを、「よし! やろう」とがんばる習慣があるかどうか。その差が時を重ねるほど清らかに美しくなっていく人、美しさが衰えていく人、その分かれ道になるのですから。

ちなみに、「まぁ、いっか」が多い人は化粧ポーチの中が汚ない、というのも私が経験から得たバロメーター。さて、あなたの化粧ポーチはどうですか?