YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.61 その一歩を丁寧に。 ~キレイを育む“いい足跡”の残し方~

一年のうちで最も寒いといわれる2月。時に春のような陽気の日もあり、体調のコントロールが難しい時季でもありますが、みなさんインフルエンザや風邪などひいていないでしょうか?

さて、前回のエッセイでは「“今”は常に進化するための通過点であり、目の前にあることをコツコツと積み重ね、自分の後ろに“いい足跡”を作る意識がいい未来へと繋がる」ということをお伝えしました。今回はその、“いい足跡”から繋がるお話。前回は比喩として使ったこの言葉、じつはウォーキングにおいて“正しい姿勢で正しく歩けているか”をジャッジするバロメーターでもあるんです。

どんな足跡が“いい足跡”か、見分けるコツがわかりますか? 例えばプールから出たあと、バスタオルで軽く体を拭いてプールサイドを歩き、振り返ったとします。後ろについた足跡の、どこに1番水が溜まっているでしょう? 最初に乾くのはどこで、最後まで乾かないのはどこでしょうか。

外側重心の人は足跡の外側に、内側重心の人は内側に多く水が溜まるはずです。ちなみに私の場合、1番多く水が溜まるのは足指の付け根に当たる場所(それも人差し指)で、当然乾くのはここが最後。このバロメーターは、真っさらの雪の上や砂浜でも“水が溜まる部分”を“深く沈む部分”に置き換えて判断できますから、歩き方の定期的なチェックにぜひ活用してみてください。靴底の減り方でもある程度わかりますけれど、無防備な素足の足跡が示す答えは、さらに明快で興味深いものですから。

そして肝心の、“いい足跡”を残す足裏の動作はこう。まず踵から着き、足先に向かって骨を1つ1つ順に着けていくようになめらかにローリングさせ、足指の付け根に達したら地面を蹴り、指先で地面を払うように「すっ」と離す。この時指は自然に伸ばし、筆の“払い”をイメージするのがポイントです。

歩く時に使うのはあくまで後ろの脚で、足裏はその動きに合わせて地面と接するパーツ。動作そのものは重要ですが、余分な重力はかけないようご注意ください。初めて私のレッスンを受ける方は必ずと言っていいほど「脚はどうやって前に出すんですか?」と質問されるのですが、脚は“前に出す”のではないんですね。自分から前へ行こうとするのではなくて、かかとから地面に着地して、ゆっくり体重移動をし、後ろ脚で蹴ることで体全体が前に押しやられ、その流れに乗って次の一歩が着地する。

丁寧な体重移動がとにかく大事で、それを繰り返すことでどんどん循環し、動作がスムーズに回っていきます。脚力が強ければバネが増し、前に押しやる力も強くなる。もっと言えば、上半身がどこに置いてあるか、どこにどのくらい柔軟性があるか、それによって脚力にどのくらい重力を与えているか、余分な重力を抜いて一つのしなりを作れているかということも加わってきます。“いい足跡”が残る人の歩く姿は人魚のようにしなやかで、ボディラインも無駄なく美しいんです。

スピリチュアル的に言うと、もう1つ意識してほしいのが足裏を通してのエネルギーの循環。地面に踵を着けた時、そこから地球のエネルギーを吸収し、踵から脚、腰、上半身から頭…そしてまたボディを通って爪先まで……、というふうに体の中を一周めぐらせ、足先が離れる時、自分の体重と一緒に再び地面に流していく。そんな意識をもってみてください。

歩くことは一見単純な動作の連続で、どんな姿勢でもただ足を動かすだけで体は前に進みます。けれど、じつは一歩一歩がそれぞれ同じように大切なプロセスのひとつで、それは毎日の小さな積み重ねが美ボディに不可欠であることとまったく同じ。

だから、いつもいつも目の前の一歩を丁寧に。その心がけが歩く姿を美しく見せ、キレイなボディラインを育んでくれます。後ろに“いい足跡”と道筋を残しながら。