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Essay エッセイ

Vol.60 新年も、ひとつの通過点。 ~いつも“今が旬な人”でいるための心得~

新年あけましておめでとうございます。元旦から澄み渡った晴天に恵まれ、新たな一年を気持ちよくスタートすることができましたね。

さて、2016年最初のエッセイ。普通なら今年の抱負や目標を掲げるところなのでしょうけれど、3年前の年初のエッセイ(Vol.24「今年の目標は?」と聞かれたあなたに)にも書いたように、「目標は立てたい時が立てる時」というのが私の考え方。それよりも、このタイミングだからこそ心に留めてほしいことがあります。

それは、“今”は常に人生の“通過点”なのだということ。

その大切さを実感させてくれたエピソードを、ひとつお話ししますね。少し前、親友の元彼と偶然再会する機会がありました。私がまだモデルをしていた頃ですから、かれこれ18年ぶりになるでしょうか。彼は最初私に気づかなくて、その場にいた共通の友人が「覚えてる? ◯◯の親友だよ」と言ってようやく気づき、次の瞬間「えーーーーー!!」と驚愕。その後、しげしげと私を見て、「……なんかさ、いい感じになったね」とひと言。

昔の私をよーく知る彼のその言葉は、流行に走ったり、変に手を加えて全然違う顔になっていたり、ガクンと落ちたりするのでもなく、「いい感じで進んで来ているね」というニュアンスで。それがすごく嬉しくて、最高の褒め言葉だと思いました。

「昔と変わらないね」を褒め言葉として捉える方はよくいらっしゃって、私自身も時々言われることはあったのですけど、最近は「変わらない」と言われるより「それ、似合ってますね」や「センスがいいですね」のように、その時々の身になじんだポイントを「いい」と言われる方が断然うれしい、と感じるようになりました。なぜなら、「昨日より今日の方がキレイ」を目指して進み続けている私にとって、”今”はいつも通過点。過去と同じであるはずがないのに、「変わらない」と言われたらその成果が出てないということですから、逆にがっかりしてしまいます。

“今”という通過点をどう受け止め、どう繋げて前へ進んでいくか。そのことをいつも心に留めて、毎日丁寧に、コツコツ積み重ねてきたから得ることができた褒め言葉。それは、1つ1つの通過点をできるだけ正しく進んで行くために、時に後ろ(過去)を振り返ることも大切なのだと気づかせてもくれました。

「後ろを振り返る」と言うのは易しで、実際には勇気のいる作業ですよね。私自身、その時々で最善を尽くし、最良と思う選択をしてきたはずなのだけど、「なんでこうなっちゃったの?」「あの時の仕事がこうだったら…」「あの話を受けていれば」そんなふうに思うこともしばしば。できれば蓋をして、隠しておきたいこともたくさんあります。だけどよくよく考えてみれば、コンプレックスがあったから“どうすればキレイになれるか”を深く追求できたし、病気の経験があったから効果的な予防ケアを身につけることができたわけで、失敗も間違いも全部ひっくるめて“今”の私へと繋がっている。「いい感じになったね」のひと言で、そんな自分の“後ろ”をパンっと上から見ることができて、「なかなかよかったじゃない?」と受け入れることができたし、「自分の進んで来た道は間違ってなかった」という自信にもなりました。

過去に浸るのはよくないけれど、客観視することができればこれまで歩いてきた道が、足跡がより確かなものになって、 “今”という通過点からの一歩をゆとりをもって、よりよい方向へ踏み出す手助けになる。最近は社会的な風潮も手伝って、みんな前を向くことばかり重視しがちだけど、「後ろ」があってこその「前」なんです。レッスンでもカラダの前面にある腹筋より背筋を重視しますし(Vol.45「鍛えないで! その腹筋」)、過去の出会いを大切に育んだから今楽しく過ごせる相手がいる。すべてが自分の「後ろ」になるから、いつも“今”が通過点の1つであることを忘れないで。

こうしたい、こうなりたいという気持ちが自然に湧き上がった時、すぐに動けるように。いくつになっても、今が一番キレイな自分であり続けるために。目の前にあることを丁寧に、コツコツと積み重ねて、自分の後ろに“いい足跡”を残して行きましょう