今年は梅雨がずいぶん長引きましたけれど、いよいよ暑さ本番。開放感につられて薄着が過ぎないよう、肩と首は上からくるエアコンの風から守ってあげてくださいね。筋肉が冷えると動かしづらくなったり、肩こりがひどくなったりしますから。
さぁ、7回に渡って続いた「見返り美人プロジェクト」も最後の回。みなさん、頭と肩、腕、骨盤の正しい位置と動かし方は意識できていますか? 今回フォーカスするのは「脚」、もっと言うと「脚さばき」へのフォーカスです。上半身がきちんと整っていることが前提なので、怪しいと思う人は気になるパーツを復習しつつ臨んでくださいね。
まずはいつもの通り、現状の確認から。Vol.63のチェックシートの振り返りです。「脚さばき」の現状チェックに当てはまるのは……、
- 1. 歩いている自分の姿を見たとき、シルエットが揺れている
- 2. スカートが左右どちらかに回っている
- 3. 歩いているとき、脚と脚の間にスカートが入り込む
- 8. 生理用ナプキンが横モレする
はい、この4項目です。順番に解説していきましょう。1と8は前回も入っていたので重複しますが、これは骨盤の向きの間違いで重心が定まっていないため。とくに横揺れは重心が外側にかかっているということで、脚の筋肉の外側ばかりを使うことになるので脚がどんどん太くなってしまいます。左右均等の多少の揺れは、重心のバランスにそれほどの影響がないので許容範囲ですが、どちらかにより大きく揺れているのは偏りがあるということですから、絶対NG。
2の「スカートが回っている」というのは、歩いているうちにスカートの正面がどちらかにずれてしまっている、という状態。これは回転方向と逆の脚が、本来の軌道より外側に“オーバーワーク”しているから。これはスカートだけじゃなく、ウエストインしたシャツやカットソーについても言えることなので、改めて観察してみてくださいね。3は2と繋がっていて、脚がオーバーワークすることでスカートを自分の脚で巻き込んでしまい、歩いている間中それが繰り返されて、気づくとスカートが回っている……という次第。
じつはこの“脚のオーバーワーク”、無意識にそうなっている女性がすごく多いのですが、それには日本の着物文化が背景にあると考えられます。着物を着ると、脚をアルファベットの「O」の字のように外側から回しこんで歩くケースが多く、その立ち居振る舞いを周りから自然に受け継いだお祖母さま、お母さまの背中を見て私たちは育ったわけですから、意識できないのも仕方ありません。もっとも、若い世代はそれがずいぶん薄れてきているようですが……。
さて、現状と背景がわかったら、次は脚さばきの正解について。まずは骨盤をきちんと立て、そのまま「腰骨から歩く」という意識をもってください。もちろん、きちんと立てた骨盤の上に上半身全体をまっすぐのせて。そうすると余分な体重が脚にかからず、重心をコントロールしやすくなります。その上で、内側重心を心がけながら脚をまっすぐ前に出す。軌道がアルファベットの「I」、もしくは「X」を描くくらいがちょうどいい。つま先の向きが右足は1時方向、左足は11時方向を向いているイメージです。
足をすっと前に出した時に、後ろにある脚で地面を蹴る。体はそれにつれて自然に前へ移動するのに任せ、着地します。くれぐれも前のめりにならないよう意識して。膝は決して伸ばしきらず、地面を蹴る時は脚の内側と後ろ側の筋肉をしっかり使ってバネにしてください。ヒップから意識するとベストです。そうすると前脚をがんばって前へ出すことなく、歩幅が広がりますから。もうおわかりかと思いますが、後ろ脚で蹴るから前に進んで行くんですね。そして着地はかかとから、足裏を徐々にローリングさせて。人差し指と中指で体重を抜いていきます(一般的なパンプスとスニーカーの場合。ウエッジソールとミュールはそれにふさわしい歩き方があるので、また別の機会に)。
つま先の向きを意識して、内くるぶしを軽くぶつけながら歩いていくとわかりやすいですね。これだと例えば膝丈のスカートなら、膝の内側5センチのところがスカートの真ん中に「ポン、ポン、ポン」と当たっていくので、巻き込んだり挟み込んだりすることなく歩けますし、内側重心への意識と脚の軌道修正でシルエットの揺れも少なくなるはずです。足首とふくらはぎもきちんと使えるので、何より脚がほっそりと引き締まります。
さぁ、以上で正しい足さばきの解説は終了。ここでも大事なのは「前」でなく「後ろ」だということがおわかりいただけたでしょうか? ボディラインを作るのは日常の動作であり、後ろ姿の美しさは自分からは見えない“後ろへの意識の高さ”で作られる。今日から「見返り美人」の仕上げをして、夏本番を思い切り、自信をもって楽しみましょう!