YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.68 キレイの距離感 ~見返り美人に磨きをかける所作のコツ~

夏から秋へと移り変わる、秋雨の季節。この時季は温度と湿度、気圧の変化がめまぐるしく、自律神経が乱れやすくなりますから、こまめなケアと体温調節で体を十分養ってあげてくださいね。

さて、この夏の一大テーマだった「見返り美人」。美ボディにとって“後ろ”を意識することがいかに大切か、5回に渡ってお伝えしました。でも、じつはまだ完結ではありません。美ボディが生きるも台無しになるもそれ次第、というほどの威力を秘めた、最後の一滴のエッセンス。所作の美しさです。どんなに顔立ちが整っていても、ナイスバディの持ち主でも、立ち居振る舞いががさつで忙しなかったら、その人を「美しい」と感じるでしょうか? 逆にスタイルがそんなによくなかったとしても、立ち居振る舞いがやわらかく、丁寧な人にはきっと見惚れてしまうはずです。所作はその人の印象を想像以上に左右するもの。であれば、その武器を味方にしない手はないですよね!

所作を身につけるといいうと、マナーレッスンを思い浮かべるかもしれませんが、山田流はとてもシンプル。動作の軸となるところから、1つ心臓に近い部分を意識する。それだけです。例えば、カフェやレストランでグラスを持つとき。手で持つことを意識すると、指先はもちろん、手首にも力が入って固まり、自然と動きが硬くなります。けれど、“1つ心臓に近い腕で持つ”と意識するとどうでしょう。グラスを持つ手元の力が抜け、手首は自然にしなり、動きにはゆとりが生まれ、指先まで流れるような所作になります。そう、動作には「キレイに見せるための距離感」とも言うべきものがあるんです。同様に、バッグを肩にかけて持つときは肩甲骨でもつ。歩くときは、脚でなくてお尻から歩く。そんなふうに、動作の距離感を変えてみてください。

これは人に見られる仕事である、表現力を学んだアスリート、ダンサー、モデルたちの使うテクニックで、彼女たちの動きやポーズがキレイに見えるのはそのため。一流のモデルさんともなると、グラスを持つときは肩甲骨から、歩くときは腰から、というように、2つ3つ心臓に近いところを意識しています。さらにいうと、体の外側でなく、内側の筋肉を使うようにするのも美しく見せるポイントです。外側の筋肉は鍛えれば鍛えるほど太くなるけれど、内側の筋肉は鍛えるほどに締まっていきます。締まった筋肉はとてものびやかですから、ブレずにゆっくりと動かせます。同時に関節をピン!と伸ばしきらず、少しのゆとり、振る舞いの動きの幅に“のりしろ”を残すことも心がけてみてください。

所作はその人の心を映し出す、鏡のようなもの。少しのゆとり、のりしろを残した動作は心にゆとりがないとできなくて、その一方で、所作への配慮が心にゆとりを生む、という効果もあります。美への感度が高まっていくこれからの時季、所作の美しさに磨きをかけて、より実り豊かな秋をお過ごしください。