私は多種多様な会社に接遇マナーや姿勢、歩き方を指導しています。
接遇マナーだけでなく、姿勢の大切さに気づいている方は勿論やる気があり、その会社はイキイキとした空気に満ち溢れています。そうした方々とご一緒し、学ばせていただいた経験は本当に宝物。
皆さんもお心当たりがあるかと思いますが、サービス業だけではなく、社員またはスタッフひとりの身だしなみが、その会社の印象を良くも悪くも決めてしまうことがあります。また、業種や会社によっても、身だしなみのマナーは個々に違ってくるものです。
そんな中、今回は私がうちのスタッフに求める見だしなみのマナーを少しだけお伝えします(よく聞かれるので(笑))。
まず、服装やメイク、ヘア、ネイルも含めて、すべてのバランスがとれていることです。
たとえば、「今日のネイル、可愛いですね」「そのピアス、素敵ですね」などと、どこか1ヶ所だけほめられるのはNG。相手に内心「きれいだな」と思われるまではいいのですが、口に出して指摘されるのは、その部分だけ変に浮いていて、全体のバランスからははみ出しているのです。反対に「スタイルいいですね」「いつもカッコいいですね」などと、全体をほめられるのはOKです。
ほとんどのシーンでメイクもヘアもスタッフ本人に任せていますが、最終チェックはスタッフ全員で厳しく行い、アイメイクや口元など、パーツだけ目立つことはNGです。また、身に付けるもののルールは、マークなどが入り、ひと目見て特定のブランドのものだとわかるものは禁止。どこのブランドかわかりにくいものならOK。ピアスも揺れるものは、相手が耳元に視線を奪われてしまい、目を見てきちんと話せなくなるのでNGです。
服装やメイク、ヘアも全体的にバランスがとれていて、「なんだかきれいね」「さりげなくエレガントね」というのはOK。要は一部だけはみ出したりせず、全体のバランスがとれているかどうかが肝心なのです。
山田友美 WALKING STYLEでは清潔感が一番重要です。厳しい言い方になるかもしれませんが、身だしなみが整っていなくて、その場にいることでかえってマイナスの印象を与えるようなら、いないほうがいいのです。洋服にシワやほつれがないか、ホコリや毛玉が付いていないか、ストッキングが伝線しそうになっていないか、髪の毛に乱れはないか……。清潔感からすべては始まり、少しでもだらしなさが見えると、全部が台無しになるのです。
ほんの一部の基本ですが、いかがでしたか? 依頼するシーンによって少しずつ変化はありますが、ここまでは必須科目なのです。
さて全体のバランスがとれ、身だしなみをきちんと整えた上で、日常のシーンによっては、自分の印象を変えたいときもありますよね。そういったときは、姿勢や立ち居振る舞いを変えるといいのです。最終的に敷かれたランウェイをどう歩くのかは自分次第です。
たとえば、今日の格好はとても地味で、華やかにするメイク道具も洋服も持ち合わせていないけれど、急な食事のお誘いがあった場合。こんなときこそ、立ち居振る舞いをしっかり意識するのです。
たとえば口角を上げ、首を左右どちらかに少し傾けた姿勢をすれば、女性らしく、華やいだ印象になります。
カジュアルな雰囲気のお店で、自分をよりフランクな印象に見せたいときなら、髪をまとめる仕草をしてみたり、リアクションをいつもよりパキッと大きくしてもいいでしょう。
しっとりとした雰囲気の会員制のシガールームなどで目上の方が多い場であれば、背すじをきちんと伸ばして、ゆっくりとうなずくくらいがちょうどいいかもしれません。
要は姿勢や立ち居振る舞いは、身だしなみを整えた自分が最後に付けるアクセサリーになり得るのです。
例にも出したように、背すじや首すじをまっすぐに伸ばした姿勢だと、相手に凜とした印象や、ピシッと改まった印象が与えられます。
背すじを胃の辺りからほんの少し丸めて、前屈みの姿勢になると、人懐っこく、可愛らしい印象になります。このとき、肩は必ずまっすぐ180度になるように開いておくことが大切。肩も背すじと一緒にぐるっと丸めてしまうと、ときにだらしなく、媚びた印象を与えてしまうのです。バストアップは正せている状態で首を傾けて、「うん。うん」と丁寧にうなずくようにすれば、優しい印象や、清潔感のあるやわらかさが際立ちます。
また、背すじを伸ばして、上半身を股関節から前に倒した姿勢なら、真面目に話を聞き入っている印象を与えられます。
手の位置でも、人の印象はガラリと変わります。顔周りに手を添えると、可愛い印象や、甘えた印象になります。反対に手を顔から離していくと、いわゆる仕事中の堅い印象に変わるのです。また、心臓に手を近づけると、母性的な印象が与えられます。
このように身だしなみと清潔感を意識したあとは、姿勢や立ち居振る舞いをほんの少し変えるだけで、相手に与える自分の印象がガラリと変わります。自分が最後に付けるアクセサリーとなるお洒落は、振る舞いと姿勢なのですね。ぜひ、日常生活の中で活用してみてください。