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Essay エッセイ

Vol.82 自分の容量をオーバーしないために必要なのは“断る勇気”

年末年始を目前に控え、何かとお誘いが増える季節です。毎年、この時期は気づいたら、予定がパンパンに詰まっている方も少なくないのではないでしょうか。

さて、スマートフォンやパソコンであれば、容量をオーバーしそうになると、容量不足のメッセージが表示され、限られたところでストップできます。しかし、私たち人間は、なかなかベストな範囲がわからないもの。自分の容量をオーバーしていても、意外にどんどん詰め込んでしまえるものですよね。

たとえば、何かしら依頼やお誘いをいただいた場合。すぐに返事をせず、「どうしようかな」と自分の中で留めておく人は多いです。頭の中でずっと考えているうちに、次の依頼やお誘いが来て、気づかずにどんどん溜め込んでしまい、やがてにっちもさっちもいかなくなって、自分の頭の中だけではなく、スケジュールまでも容量オーバーさせてしまうのです。どんな立場の方でも、生活の中でやらなければいけないことは当然あります。普段からやらなければいけないことをいち早くすませたり、返事を早くしたりして、どんどん出していかないと、結果的に溜め込んでしまい、ミスをしてしまったり、周りに迷惑をかけたりして、上手く回らなくなってしまうのです。自分が何を出して何を入れ、いかに循環させることが大事なのか、常に意識して考えておく必要があるのです。

人間は、相応の努力や訓練によって、自分の容量を引き上げることは可能です。しかし、今の自分の容量は必ず決まっています。自分の中で溜め込まずによりよく回していくために、私がおすすめしていることをご紹介しましょう。

まず、新しく入ってきたものは、何ごともできるだけ早く処理したり、返事をします。どんなに簡単なことやささいなことでも、自分の中に留めて、たくさん溜まってしまうと、上手く回らなくなってしまうからです。ちなみにメールの場合、「取り急ぎお愛想なしで失礼をお許しください」「のちほどゆったりと確認させていただきますね」という便利な文章が私の定番です。

一方、「どうしよう」と迷うものについては、箇条書きにして、一旦頭の外に出しておきます。一度、外に出すことで、頭の中に隙間ができるので、上手く回っていくようになり、自分の容量にゆとりが生まれるのです。そして、時間があったり、気分が乗ってるとき、少し頑張りたいと思ったときに箇条書きにしておいたものに取り組みます。自分が「やりたい」と思ったタイミングでやれば、パフォーマンスも当然上がるのです。

ただし、外にずっと置いたままで、いつまで経っても取り組めないようなら、それはもうナシ。「今はできない」ということです。あきらめるのか、他の人に頼むのかをするべきでしたね。

さらに箇条書きにして外に置いているものがあまりに多い状況なら、新しく入ってきたものは、すぐに断るべきです。「いや、私はやれる」「断れない」と言って、かまわずどんどん入れていくと、あっという間に自分の許容量を超えて、パンクしてしまうのです。もしも断れない場合は、ベストで臨めるだけの容量を確保しなくては!

私は仕事の予定が詰まっている時期に、食事などに誘われたら、すぐに断るようにしています。そして、「遅れて参加することはできるのだけど、多分クタクタで顔だけ出して帰るお愛想なしになるかも。もしもスケジュールが変更になったときは、ダメ元で当日参加の連絡させてもらっていいかな」と伝えます。自分がオーバーワーク気味で、相手に迷惑をかけてしまいそうなときは、最初から全部断ってしまうのです。実際、疲れ切っていて話していても上の空だったり、明日の予定を気にしながら気が重いまま参加するようなら、相手にも失礼です。

実はすぐに断れば、いいこともたくさんあります。期限ギリギリまで返事を保留していると、だんだん他の人の予定が出揃ってきたときに、行けない人が多かった場合など、自分が行かないといけない雰囲気になることもありますよね。逆に最初に断ってしまえば、責任感から解放されるので、そういった気遣いをする必要もなくなります。そして、すごいことに前日や当日になって、急に「行ける!」と連絡してみると、「来てくれるの!」と、ものすごく喜ばれることも多いのです。ほとんどの人は「どうしよう」と判断せずに足踏みしている時間が長いので、迷いを溜め込んでしまうのでしょう。自分の容量を超えないためには、“断る勇気”が必要です。

心だけでなく、体の面でもまったく同じです。みんな自分の体の許容量を超えて、抱え込みすぎているから、結果的にむくんだり、太ったりしてしまうのです。

実は断り上手な人は、体もスリム。反対に自分で抱え込みがちな人は、やはり体も心もどこかむくんでいるものです。むくんでいるときこそ、溜め込まずにきちんと消費、消化し、体外にどんどん排泄する必要があるのです。また、食べるときなら、自分が本当に食べたいものや、体に必要なものを取り入れるようにします。手近なものや目に付いたものを惰性で体に入れるのではなく、本当に200%の満足度が得られるものをひとつ選んで食べると、翌日のパフォーマンスはびっくりするほど上がるものです。

何かお誘いがあったときに、自分の中で少し躊躇したり、軽い迷いがあるようなら、それは容量オーバーの合図です。できるだけ早いタイミングで断るようにしてください。意外に断っても、人間関係はまったく崩れないので、安心してくださいね。