YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.84 正しい姿勢の軸となるのは“逆T字”のライン

新年を迎え、新たな目標や指針を立てている方もいらっしゃるのではないでしょうか。何ごとにも「これだけは押さえておきたい」という、軸となる部分があります。

正しい姿勢に関しても同様です。私の理論をよく理解してくれている生徒さんたちには、背骨と骨盤の縦横のラインから成る“逆T字”と、メンタルが絶対だという話をよくしています。極論を言ってしまえば、この2つの軸さえしっかりしていれば、周りの筋肉がおのずと導かれて上手くしなり、所作や歩き方もカッコよくなって、ボディメイクも着実にできていくのです。今回は正しい姿勢のひとつ目の軸となる“逆T字”について、詳しく説明していきたいと思います。

正しい姿勢を考えたときに、もっとも重要になるのが体の重心の置き方です。私たちの体の中で、一番大きく、しっかりしている骨格は、逆T字の横線にあたる骨盤です。自分の体の重心を効率よく安定させたいなら、体の中の一番強くて丈夫な骨格とそれに寄り添う筋肉を味方につけるのが得策。体内でもっとも強い骨格である骨盤の上に、逆T字の縦の線となる、頭蓋骨から首の骨、背骨、腰骨まで丁寧に乗せると、正しい体の重心に近づきます。

体の逆T字のラインがきちんと整っていると、自然と体の内側に重心がかかりやすくなるので、歩いているときに体が左右にユラユラと揺れる心配がありません。体の中心が安定することで、太ももやふくらはぎの外側が過剰に張ったり、痛んだり、太くなったりすることも少なくなります。また、正しい姿勢を身につけていれば、猫背になったり、お腹がポッコリと出たり、腰痛などになることも少ないのです。背中が丸まるなど、姿勢が崩れてしまうと、お腹まわりをサポートするお肉をつけて、体を支えようとします。また、腰などの体の一部だけに負担をかけてしまうと、バランスの崩れから筋肉の痛みや張りを生じやすくなるのです。

前述したように、正しい姿勢ができていない場合は、体の重心が外側にかかって、歩くときに体が左右に揺れてしまったり、体の外側の筋肉が張るなど、何らかの違和感を覚えるようになります。そこで、正しい姿勢を保つために、もっとも大事な逆T字のラインができているかどうか、チェックしてみましょう。

イスに座っているときは、背骨や骨盤などの主要な骨格が安定しやすいので、姿勢をチェックするには最適です。まず、食事の際にイスに座ったら、最初に水などの飲み物を飲んでみてください。飲み物を飲んでから4秒以内にスーッと食道を通り、胃まで到達したら、あなたの逆T字がほぼ正解です。もし、飲み物が食道を流れていく感覚がないようなら、姿勢が崩れているか、すでにお腹が満たされているかのいずれかです。私の場合、“腹五分”くらいまでは飲み物が流れていく感覚があります。もし、姿勢が崩れていない場合は、「実はお腹が減っていない」「空腹は気のせい」という、自分の体からの声です。ぜひ、自分の体からの声に耳を傾けて、食べる量を調整してみてくださいね。

逆T字、つまり正しい姿勢ができていないときは、壁に沿って立ったときに後頭部と肩、お尻、かかとがつく正しい姿勢を改めて意識してみましょう。

また、意外に思われるかもしれませんが、常に正しい姿勢でいる必要もありません。筋肉は、常に動かして伸び縮みしているものなので、普段からさまざまな動作をまんべんなく行って、体の可動域を広げておくことが大切です。自在に伸び縮みする筋肉は、体への衝撃を吸収するクッションとなり、ケガなどもしにくくなります。正しい姿勢以外の姿勢や動作も決して悪いものではなく、体の可動域を広げるためには必要なものなのです。

通常、人の体はなるべく楽な姿勢をとろうとしますが、決して楽な姿勢が正しい姿勢とは限りません。体の一部分が太くなったり、痛みや張り、こりなどの違和感を生じたら、すでにアウト。それは体からSOSの声なので、すぐに正しい姿勢に直すようにしてください。できれば、違和感を覚える前に正しい姿勢に戻すのが理想です。

今回は体の逆T字のラインに気をつけて、正しい姿勢を身につける方法をお伝えしました。次回は正しい姿勢を保つための2つ目の軸となる、メンタル面についてご紹介したいと思います。