YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.85 メンタルと姿勢や筋肉の付き方は連動している

前回は、正しい姿勢の軸となる、背骨と骨盤の“逆T字”のラインのお話をしました。今回は“逆T字”のラインと同じくらい、正しい姿勢を保つために重要な“メンタル”について、お伝えしたいと思います。

メンタルと筋肉の関係性は深く、双方が一致すると相当強力な力を発揮します。実はメンタルの状態と、姿勢や筋肉の付き方は、連動しやすいのです。たとえば、気分が落ち込んでいるときは、自然と姿勢が崩れて猫背になったり、うつむきがちになりやすいものですよね。

だから、レッスンを受けるのは、生徒さんのやる気があるタイミングがベストです。自分が「やりたい」と思ったときは、ボディメイクの効果も倍になります。人によっては、10倍以上の効果が伴う方もいるほどです。反対に「気分が乗らないから、引っぱって」とおっしゃる方もけっこう多いです(笑)。もちろん、こちらからある程度、気分を引き上げることもできるのですが、基本は本人のやる気のジャッジにお任せしています。

一般的に「病は気から」とよく言われています。多少風邪っぽくても、「風邪なんか引いてない」「手洗いとうがいで十分」と思っていたら、本当に治ってしまうのです。つまり、メンタルにある程度の余裕があるなら、体は大丈夫。逆にメンタルの余裕がまったくなく、気持ちがいっぱいいっぱいになってしまったときは、体の状態も姿勢も全部がぶれ始めるのです。

メンタルという“自分の軸”さえしっかりしていれば、ある程度のことなら対応できます。そもそも、人生は何が起きるかわからないもの。さまざまな出来事に影響を受けて、気持ちが多少揺れ動いたとしても、まるで柳の木のように折れることなく、しなって、風が止んだときに元に戻れば、問題ないのです。

でも、もし思いきり揺れて傷ついて、気持ちが折れてしまったときは、とことん落ち込んだり、泣いたり、自分の気持ちのまま過ごせばいいです。そう、そのときは何も考えなくていいのです。そして、少しでも起き上がってみようかな…と感じたときには、まず自分自身に立ち返ることが大切です。「自分はどうして傷ついたのか」「どういう自分が好きなのか」「自分は何を一番大切にしているのか」「自分が一番好きなことは何か」「自分はどういう風に楽しく過ごしていきたいのか」

こうした「自分はどうしたいのか」に焦点をあてて考えていきます。たとえば、「追い込む自分が好き」なら、それでいいのです。人それぞれに色々なパターンがあっていいのですが、大切なのは自分が決めること。気持ちが折れるくらい、メンタルが追い込まれてしまったときは、大抵自分自身を見失っています。

普段からメンタルにある程度の余裕を持ちたいなら、自分の心の中をきちんと整理する時間を作るといいでしょう。

たとえば、犬の散歩が日課の方なら、犬に寄り添って行きたいところに行かせている間に、頭の中では考えごとができたり、心の整理ができたりします。大好きな犬も喜ぶし、自分のことを考える時間も持てているのです。心身ともにリラックスする自律神経の副交感神経が働いているので、気持ちも筋肉も適度に緩みます。

他にも、図書館や書店に行って本を読む、ゆったりと豆を挽いてとっておきの茶器でコーヒーを飲む、アロマを焚いて好きな音楽を聴くなど、自分が心地よく感じることなら何でもかまいません。メンタルにゆとりを持つには、心身ともにリラックスして、自分のことを考える時間が必要なのです。

私自身は毎日、お風呂を出たり入ったりしながら、90分ほど映画やドラマなどの映像を見ています。ボーッと過ごしたいときは、きれいな風景の映像を流しておくなど、その日の気分に応じて選択しています。目に入るものや、香るもの、耳に流れてくるものは、そのときの自分の気持ちに寄り添いながら選べるのでおすすめです。

現代を生きている限り、さまざまな情報や雑音は、毎日止めどなく入ってきて、私たちの心を惑わせます。忙しい毎日だとは思いますが、意識的に心身ともにリラックスして、自分のことを考え、整理する時間を持ってみてください。改めて自分自身に立ち返り、メンタルという“自分の軸”をしっかり持てば、姿勢や筋肉の付き方、ボディメイクもよりよく変わっていくはずです。

次回は私自身が心がポッキリ折れてしまったときに、どう過ごし、どう立ち上がったのかをお伝えしたいと思います。