YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.93 あえて自分の弱いところを見てみる

これまでも何度となく、「己を知る」ことの大切さをお伝えしてきました。やはり、今は自分を見失いやすい時代とも言えます。今の世の中は、さまざまな情報が入ってきて、選択肢がたくさんありすぎるがゆえに、なかなか簡単には選べないのです。また、職場や家庭においても、周りの人たちや家族に目配りし、自分のことはつい後回しになってしまいがちな人も少なくないのではないでしょうか。周りに目を向けると、円滑に回していくために、自分自身の時間を犠牲にせざるを得ないのです。とはいえ、どんなに忙しくても、要所で自分を見て、きちんとケアしていかないと、ボディや肌、体調までも、悪循環に陥ってしまいます。

実はボディについても、自分のウィークポイントを見るほうがずっと役に立ちます。逆に自分の体の弱いところを知っておかないと、改善しづらいですよね。

私自身も肩幅が狭いから、洋服は肩に切り替えがあったほうがいいとか、脚が短いから、お尻の位置を上げるとちょうどいいという風に、自分の弱点を知って、対処方法を導き出してきました。「私ってだめよね」と愚痴で終わるのか、自分の弱さを知って、改善するのとでは、未来は大きく違ってきます。

最近は講演会でも、最初の15分間で自分が歩いているところを前と横から動画に撮り、見てもらっています。そこで、「己の姿」を知って、気づいたところを話してもらうのです。自分の弱いところや、悪いところを潰していくとなると、誰もが一生懸命になるし、話の理解度も高まるのです。

自分の動画を見て、一番多い意見は「頭が前に出ている」こと。そもそも人の頭の重さは5kgほどあり、日頃さまざまな動作をするときに、手が前に出ることが多いため、自然と前かがみの姿勢になりやすいのです。また、頭が前に出ている人は、無理な体勢で重い頭を支えようとするので、肩がガチガチにこり固まっています。マッサージで肩をほぐし、一時的にこりや痛みがなくなったとしても、日常的に頭が前に出ていれば、頭の重みを支えるべく、また肩が酷使され、ガチガチにこってしまうのです。

こうして、自分の弱いところが出てきたときは、チャンスと捉えてください。案外、自分の弱いところは、知らず知らずのうちに、ぼやきとなって出ていることも多いです。自分自身の愚痴が出たら、気づけてラッキー。気づきの内容、つまり自分の弱点を直せばいいだけです。あとは、改善する方法を見つければ問題ありません。自分の弱みを知って、愚痴って終わるのではなく、「どうするか」が一番大切です。

先ほどの肩こりが出ている人も、元を正せば頭が前に出ている前傾姿勢に問題があります。そこで、頭の位置を正すことで、悪い姿勢や、悩みの種の不調が根本的に解決できるというわけです。

一般的に基本姿勢は、かかと、お尻、肩甲骨、後頭部が壁に付くと、望ましいと常々お伝えしています。ですから、肩こりのある方は、肩甲骨の下の部分に、後頭部を乗せましょう。次に後頭部から肩甲骨の下までをお尻の一番高いところに乗せるようにします。こうすれば、頭が正しい位置に戻り、正しい姿勢が保ちやすいのです。

後頭部が大きく張り出していたり、首の長い方の場合は、あごを引いて、耳の真ん中を肩甲骨の下辺りに乗せてから、お尻の一番高い位置に乗せるようにしてください。

自分の弱いところは、いつもとは違うところにも表れます。たとえば、いつもより靴底やヒールの減りが早いなら、関節を固めて、ひざ下だけでガンガン歩いている可能性があるのです。いつもとは違う、ささいな自分の変化に、ぜひ注目してください。

体については、弱いところや悪いところを放置しておいて、症状がよくなることは絶対にあり得ません。自分の弱いところに気づいたら、またとないチャンスです。弱いところを直していけば、やがて自分の力になっていくでしょう。