YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.94 気持ちひとつで状況は変わる

社員教育などでよくあることなのですが、どうしても上手くできなくてミスをしたときに上司に怒られて、長時間、落ち込んでしまうこともありますよね。怒られて、落ち込む気持ちは心底理解できるのですが、沈んだ気持ちをいつまでも引きずってしまうと、本人や周りの人もより大変な状況になってしまいがちです。特に真面目な人ほど、「あれでよかったのかな」と考え込んでしまって、自分の中での答え合わせをつい何度もしてしまう傾向があります。もちろん、ミスの原因を見つけることは非常に大切なのですが、落ち込んで引きずるよりは、気持ちを素早く切り替えて、“今ここ”に意識を向けたほうがいい場合もたくさんあるのです。

たとえば、バレーボールの選手でも、失点したことを悔やんで引きずっていたら、今まさに刻々と変わっていく試合の状況に対応していくことはできません。失点時の後悔を引きずって、注意散漫になると、また失点、もしくは敗戦という事態も起きかねないのです。

接客業にしても、お客様からのクレーム対応は、スピードが肝心です。お客様からクレームが入ったときは、すでに何度も違和感があって我慢した上で、ついに口に出しているときが多いからです。お客様からクレームが出たときは、すでにかなり遅い段階だからこそ、迅速で誠実な対応が求められます。

こうしたことは、日常生活のさまざまなシーンで、身に覚えがある方も多いのではないでしょうか。気持ちを上手に切り替えて、今にしっかり集中するほうが、よりよい状況や結果が生まれやすいのです。

とは言え、人間ですから、後悔や落ち込んだ気持ちをなかなか手放せず、引きずってしまうこともままあります。そんなときは、気持ちを切り替える方法をお伝えしています。まず、気持ちを切り替えるには、行動から変えるのが一番有効。行動を変えないと、気持ちは切り替わらないと言っても、過言ではないのです。

実は日常生活の中には、気持ちを簡単に切り替えるスイッチとも言える行動があるのです。たとえば、ゆったりお化粧室に行き、歯磨きやメイク直しを念入りにする。また、一度靴を脱いだり、時計をはずし、ネクタイを締め直す…こんなささやかなことでかまいません。私自身は気持ちを切り替えたいときは、ヒールをチェンジしたり、洋服を着直したり、まとめ髪を下ろしたりしています。些細なことでいいので、普段から自分の気持ちを仕切り直せる行動を持っておくようにしましょう。ナーバスな気持ちになったら、まずは行動を変えて、その後の時間は気持ちよく過ごすようにしてください。

もし行動を変えても、気持ちがなかなか切り替えられず、クヨクヨしがちな人は、女優になったつもりで、演じることをおすすめしています。「なぜできないんだろう? どうしよう!」と思ったときは、自分が尊敬する方をモデルにして、その人になったつもりで“真似”をするのです。自分ではないくらい、その人を真剣に演じてみれば、気持ちだけではなく、顔つきや表情、見た目もあっと言う間に変わります。

何か物事ができなくて困っているなら、周りの「いいな」と思う人をパッと真似してみてください。何ごとも最初からできる人はいないし、真似から入ることは非常に有効です。実は尊敬できる人の真似から入る人は、一番伸びやすいタイプ。さらに気持ちの切り替え上手にもなれるのです。

自分の心持ち次第で、同じ時間でもまったくの別物になります。たとえ何か嫌なことがあったとしても、気持ちさえ切り替えられれば、その1秒後から状況は変わっていくのです。

反対に落ち込んだ心のまま、過ごしていると、どうしても嫌なところばかりが目に付いてしまい、さらに気持ちが沈んでいくといった悪循環に陥りがちです。

気持ちの切り替えは、先ほど紹介した、ちょっとした“訓練”によって、いくらでも力になるので、ぜひ活用してみてください。