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Essay エッセイ

Vol.96 普段の生活に「サムシングフォー」を

結婚式で花嫁が身に付けると幸せになるとされている、4つのアイテムが「サムシングフォー」。皆さんも一度は触れたり、見聞きしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。

改めて、「サムシングフォー」の内訳をご紹介すると、「サムシングオールド(何か古いもの)」、「サムシングニュー(何か新しいもの)」、「サムシングボロー(何か借りたもの)」、「サムシングブルー(何か青いもの)」という、4つのアイテムから成ります。

「サムシングオールド」は、祖母や母から譲り受けた伝統的なものや古いもの…たとえば、真珠のネックレスなどでもいいかもしれません。「サムシングニュー」は未来への希望や新鮮さを表していて、ドレスや靴など、何か新品のものを用意します。「サムシングボロー」はすでに幸せになっている友人などから、その幸運にあやかれるよう、借りてきたもので、グローブなどでもいいでしょう。「サムシングブルー」は、花嫁の清らかさや純粋な気持ちを表す色で、ハンカチの刺繍など、人目にはつかないところで青いものを持つといいとされています。

古くからヨーロッパでは、花嫁がこれら「サムシングフォー」を揃えて身に付けると、幸せになると言い伝えられています。

普段、ブライダルの仕事で、新郎新婦に姿勢や所作など、立ち居振る舞い全般の指導をしていることから、私にとって「サムシングフォー」は、ごく身近に感じられるものでした。あるとき、結婚式のみならず、日常の仕事やボディメイクにおいても、「サムシングフォー」は大切なのではないかと、ふと思い至ったのです。

たとえば、会社であれば、「サムシングオールド」は古くからある会社の考え方や、ベテランの先輩たちの考え方を指します。「サムシングニュー」は新世代の人たちの新しい考え方、「サムシングボロー」は井の中の蛙にならないための外部の人たちの時代の流れや世の中のニーズに即した考え方、「サムシングブルー」は、自分のピュアな気持ちです。

企業研修では、中間より上の3,4番手に属する、会社全体を見渡しながらフレキシブルに働いている層に、これら「サムシングフォー」が揃っているチーム作りをするよう、指導しています。会社の歴史や伝統など、大切にしてきたもののよさをしっかり強調した上で、新しいものやいろんな人の意見、世の中の流れを取り入れつつ、自分がどう立ち振る舞うかを考えていきます。この4つの要素の割合は同じである必要はありませんが、その時代に即して、バランスよく揃っていると、会社はおのずといい状態を保てるのです。

一方、ボディメイクにおいても、「サムシングフォー」は欠かせません。たとえば、筋肉ひとつにしても、「サムシングオールド」、つまり古い筋肉は、楽なので以前からしていた姿勢や動作しかしたくない傾向があります。しかし、我流ではなく、「サムシングボロー」、外から借りてきたもので正しい知識を得て、「サムシングブルー」、素直な気持ちで、「サムシングニュー」、今まで使っていなかった新しい筋肉を使うと、バランスのいいボディラインになっていくのです。特に人はこれまで当たり前にやってきたことには、執着していたり、習慣になっているものです。時には、今の状態が本当に正しいのか、見直す必要があるのです。案外いつの間にか本筋からズレてしまって、「こんなはずじゃなかった」と思うような状況に陥っていることも少なくありません。まずは、いつもと同じことをしているのに「枕が合わなくなった」「足がむくんで靴が入らない」「吹き出物が出る」といった、些細な“違い”に気づくことが大切です。

中には、新しい美容法や健康法、ダイエット法などをどんどん取り入れたいと考える人もいるでしょう。しかし、体のことで安易にブームに乗るのは、あまりおすすめできません。体を作る場合は、基本的なことをコツコツとやりながら、正しい情報を得て、新しいことを少しずつ試しながら取り入れていくのがベストです。

従来の基本的なものだけだと、体の状態は刻々と変わっていくものなので対応しきれません。また、科学や医学も日々進化しているので、これまでの定説が覆ることもよくあります。ですから、体についても「サムシングフォー」を意識して、4つの要素がバランスよく揃っているか、今一度見直してみるといいでしょう。