YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.99 私の歩んできた道、そして夢 前編

早いもので2011年から始めたこのエッセイは、今回でなんと99回目。この機会に、日頃からお世話になっている皆様や、出会って間もない皆様に向けて、改めて「私の履歴書」と「私の夢」をテーマに、2回に渡ってお届けできたらと思います。

普段、20代後半から30代に差しかかった女性たちによく聞かれることが、今回のテーマです。
「先生の夢はなんですか?」

私自身が今までどのような夢を持って、どんな道を歩いて、ここまで来たのかといった“道筋”を聞かれる方が非常に多いのです。おそらくご本人は社会人として、仕事は一巡してきたものの、今後のキャリアや方向性について悩む時期なのでしょう。しかし、これを話し始めると案外長くなるので、ゆっくりとお伝えできる機会が少なかったのです。

実は私、ウォーキングスタイルアドバイザーという現在の仕事に就くことを夢や目標にかかげてきたことは一切ありません。とにかく目の前にあることを精いっぱいやってきたら、いいご縁が繋がって、いつの間にかここにいる…といった感覚があります。ですから、子どもの頃の夢も、終始一貫していませんでした。

まず、幼稚園のときの将来の夢は、「婦人警官」。あまり覚えていないのですが、単に制服を着てみたかったのかもしれません(笑)。小学生の頃はずっとテニスをしていたので、「テニスの選手」、卒業文集には「かわいい人気歌手になりたい」と書いていました。ちょうど松田聖子さんのヘアスタイルや、アイドルが流行っていた時期だったのです(笑)。

当時からファッションが大好きで、父と一緒にデパートや原宿などにショッピングに出かけたり、デニムやバッグにスタッズを付けてリメイクしたりするのが好きな子どもでした。当時の愛読書はファッション誌の『JJ』で、洋服やモデルを見るのが好きだったのです。

中学を卒業する頃の夢は「保母さんや専業主婦」と書いていたので、やはりひとつの夢に向かって突き進むタイプではなかったようです。

高校生になり、初めてのアルバイトは、近所の珠算塾の講師でした。私はひとりっ子なので、教え子に慕われ、頼られることが、まるで弟や妹ができたようで、とてもうれしかったことを覚えています。また、ファーストフード店の販売員も3年間続けていました。この頃からアパレル会社に勤めていた父の仕事関係で、カメラマンの方からモデルを頼まれることが増え、そのご縁からお仕事をいただくようになりました。ただ、ここまではあくまでも学生が本分のアルバイトです。

学生のアルバイト気分が払拭されたのは、高校を卒業してから始めた、博覧会のMCを務める司会のお仕事でした。高校を卒業して進学したばかりの頃、アルバイトの求人雑誌を見て、高額の時給に惹かれ、「博覧会のMC」がどんな仕事なのかも知らずに応募してみたのです。すると、面接に来るように、との通知が届きました。何も知らずに単にアルバイトの面接だと思って、Tシャツにショートパンツで出かけたら、とんだ大間違い(笑)。指定の場所に行くと、いわゆるオーディション会場で、控え室に入ると、とてもいい香りがして、見たこともないきらびやかな光景が広がっていたのです。まるで色とりどりのマカロンが並んでいる箱を開けたような感覚でした。デパートのショーウインドウに並んでいるような華やかなファッションに身を包んだ、きれいなお姉さんたちが発声をしたり、化粧直しをして、オーディションに向けて準備していたのです。そんな場に18歳の私は、放課後、Tシャツにショートパンツで出かけていったのですから、いかに場違いだったか、おわかりいただけるのではないでしょうか(笑)。

応募者はナンバープレートを付け、オーディション会場には3人ずつ呼ばれました。私は3人のうちの3番目。まず、オーディションの手順がわからないため、前のお姉さんたちの真似をしてみようと思ったのです。1番目のお姉さんは、「こんな美人を見たことがない」と思うほど、きれいな人でした。彼女はエントリーナンバーと名前を言ってから、簡単な自己紹介や職歴を話していました。日産自動車の元ミス・フェアレディの方だったので、面接官からはステージのポージングなどを実演するよう言われ、そつなくこなしていました。2番目のお姉さんは、博覧会の大手企業のMCを務めていたため、実演するときはテーマパークのキャストも顔負けの迫真の演技でした。「この人、すごい!」と圧倒されたことを覚えています。

そして、いよいよ私の番が回ってきました。会場内には、怖そうな年配の面接官が10人くらいいて、私たち3人をコの字型に取り囲んでいます。正直、私は初めての状況にすっかり緊張してしまい、笑顔になれなかったのです。前の方たちにならって、エントリーナンバーと名前を言ってから、何を話したのかはまったく覚えていません。その後、アルバイト歴を聞かれて、ファーストフード店の話をしたところ、販売の実演をすることになりました。お客様役をしてくださった面接官の注文を受けた私は、「かしこまりました。ハンバーガーがおひとつ、コーラがおひとつですね。コーラのサイズはS、M、Lとございますが、どれになさいますか?」という風に接客していきました。そして、最後に「ご一緒にポテトはいかがですか?」と思わず、満面の笑みで聞いてしまったのです。これには場内が大爆笑! それまで怖い顔をしていた面接官の方たちも大笑いで、「あなた、笑顔がすごく素敵じゃないの!」と言われたのです。

こうして完全に場違いだった私が、博覧会の大手企業の専属MCとして採用されることになりました。ここでは、「私の人生が決まった」と言ってもいいほどの貴重な経験をさせていただくことになるのです。この経験がプロか、プロではないかを強く意識するきっかけになりました。