YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.65 たかが「腕」、されど「腕」 ~そのポジションが後ろ姿の未来予想図を塗り替える~

天気のいい日は夏と錯覚してしまうほど、気温が上昇してきましたね。この時季は夏本番に向けての体の準備期間でもありますから、着るもので体感温度を調節したり、水分の摂取量を調整したりして、夏を元気に過ごすための土台をつくっておきましょう。

さて、ボディの露出が増える夏に向けての「見返り美人」プロジェクト第3弾。前回の「頭と肩」に続き、今回は「腕」の正しい位置と使い方をお伝えします。このパーツの状態を知る目安になるのは、Vol.63のチェックシートでいうところの4、5、6。まずは項目を再確認してみてください。

  • 4. 歩いているとき、手の甲が前を向いている
  • 5. 前から見たとき、お洋服の肩のトップの縫い目が見えている
  • 6. 肩こりがある

前回の「頭と肩」とほぼ同じ、ということにお気づきでしょうか? そう、体の構造上、腕は肩が180度に開き、肩甲骨が後ろから見たときアルファベットの「I」が2つ並んだ状態になっていないと正しい位置にならず、正しく動かすこともできません。ちなみに、ほとんどの方は肩甲骨が「ハ」の字に開きっぱなしです。

では、腕の正しい位置はどこで、どう動かすのが正しいのでしょうか? 前回お伝えしたことを実践してくださっていると仮定して(笑)、肩が180度に開いていると腕全体は体の両サイドにあり、“力こぶ”といわれる上腕二頭筋は前を向き、“二の腕”や“振袖(ふりそで)”といわれる上腕三頭筋と肘は後ろを向いているはずです。そのまま腕を自然に降ろして、手のひらを体の方に向ける(気をつけの姿勢をした時の向き)親指と人差し指は前を、小指は後ろを向いている。これが腕が正しい位置にある状態です。

そして動かし方、というのは主に歩くときの腕の振り方を指していて、もちろん正しい位置のまま、腕を“振る”というよりも背筋を使い、肩甲骨から二の腕にかけてを後ろに引く、というのが適切な表現。軌道は胴体に腕を縫い付けられ、前後まっすぐにしか動かせないテディベアをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。

腕はリラックスさせ、肘は伸ばしきらないよう、そして肩から肘が体より前に行かないように。何より肝心なのは、腕は“前”でなく“後ろ”に向かって引く、ということ。みなさんの中にも“腕は前に大きく振るもの”と思ってらっしゃる方が多いのではないでしょうか? 健康のためにとウォーキングされている方はとくに顕著で、一見体を大きく動かしているようでいて、上腕三頭筋と背筋を使えていないため二の腕と背中に余分なお肉が付きやすくなりますし、腕につられて頭の位置が前のめりに、連動して肩、そして上半身全体が前重心に傾きやすくもなります。そうすると腕は体の前に、手の甲を表に向けて位置するようになり、体の外側に向かって横に腕を振る、というもう一つの間違ったケースにも繋がります。

さらに上腕三頭筋と背筋を使わず歩いていると、姿勢をまっすぐキープしづらくなりますから、背中は年齢とともに亀の甲羅のように丸く、厚みを帯びていきます。その後ろ姿は、「見返り美人」のまさに対極! 逆に、腕を正しい向きにして歩いていれば、それが二の腕と背中の自然なエクササイズになり、特別なダイエットをしなくても後ろ姿はすっきりとしなやかに整っていくのです。歩く姿も品よくエレガントに見えるのですから、改善しない手はないですよね。

さぁ、今回はここまで。「腕」とひとことで言っても奥深く、美ボディのための重要なパーツであることがおわかりいただけたでしょうか? ひとつ気をつけてほしいのは、腕を正すとき、体はバランスを取ろうと反り腰になりやすく、それが腰を痛める原因になり得るいうこと。そうならないためには骨盤を立て、お尻の穴を地面に向ける必要があるのですが、それについては次回の「骨盤」の回で詳しくお伝えしていきますね。

「見返り美人」への道も、早半ば。今日も一歩ずつ、丁寧に進んでいきましょう。