YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.75 焦り、欲、思い込み。美しさのために、勇気をもって手放すべきもの

一年で最も空気が爽やかで、気持ちよく過ごせる季節。体も心も伸びやかになって、いつもより張り切って何かをしたり、トライしてみたくなりますよね。今回は、そんな時こそ読んでいただきたいお話。

私は時折公開レッスンを行うのですが、そういう時、「先生、これは何回やればいいんですか?」「どのくらい続ければいいんですか?」と、明確な数字を聞きたがる方が必ずいます。それから「◯キロ体重を減らせばいい」「体脂肪が◯パーセントになればいい」のように、数字にこだわってしまう方も。そういう方たちは多くの場合、ボディメイクの成果がなかなか上がらない、という傾向があります。

私が目指す美ボディは、過度に鍛えることでも痩せればいいというものでもありません。“正しい姿勢”“正しい歩き方”という基本の実践によって、しなやかに体を引き締め、日々それに磨きをかけていくもの。「何回やれば」「どのくらい続ければ」叶うものではないのです。やるべきことを目一杯詰め込むと、それだけで何かを達成したような気になれますから、囚われてしまう気持ちももちろんわかります。でもそのために正しい姿勢、正しい歩き方がおろそかになっては美ボディに近づけず、反動でリバウンドしてしまったり、vol.72の正座のエピソードのように変なところが鍛えられて、ボディラインを崩してしまうことにもなりかねません。

焦らず、欲張らず、囚われず。いつも基本に立ち返り、時に立ち止まって自分を振り返る。そうすると、何をやるべきかに自ずと気づけ、そしてその答えはいつも自分の中にあることがわかります。最近家の中の細いところを整理する機会があって、過去三年分の書類を仕分けしていたら、今に繋がる仕事の答えがそこに書かれていた、ということがありました。答えは自分の中にもっていて、三年の間にきちんと成長できていたから、それを見つけることができたんですね。そして不要な書類を廃棄した後、とてもいい仕事をいただけたのはうれしいおまけ。手放すことが、新しくてより良いものを呼び込み、前に進む力になる。基本をコツコツ続けること、己を振り返って確認することの成果を改めて感じることができました。

うちの生徒さんたちも、みなさん同じ実感をしています。食事の内容やボディメンテナンスのバランス、メンタルのお天気など、一人一人に応じたテーマを設定してノートを書いてもらい、己を知るツールにしてもらっているのですが、例えば「ヘルペスができてしまったんですけど、どうしてでしょう」という方がいたとします。まずはノートを見直して、そして過去にヘルペスになったところに付箋を貼って、レッスンの時に持ってきていただきます。そうすると、ヘルペスになるのは決まって仕事で責任ある大切なミーティング前、という事実が浮かび上がってくる。原因がわかれば対処法を考えられますから、次はそうならないようしっかりと準備しておくことができます。その答えが、自分が記録したノートに書いてあるのですからおもしろいですよね。ボディメイクも同じこと。自分を見て、何がボディラインの美しさを阻んでいるのか? 足りないところ、弱いところを知らなければ、どうすれば美しくなれるかもわからないし、美しさを進化させることもできないのですから。

できれば簡単に物事を達成したいと考える方は多いですし、回数にこだわる方はそのことに一生懸命なわけですから、マインドを変えるのはなかなか難しいでしょう。けれど勇気を出して、焦りや欲、思い込みを手放してみて。そうして自分のもっている答えに気づき、正しいこと、基本をコツコツ続けていれば、成果は自然についてきます。ボディメイクも、人生も。