YAMADA TOMOMI WALKING STYLE

Essay エッセイ

Vol.70 美脚もハイヒールも“ローリング”次第 ~足裏の筋肉、正しく十分についていますか?

私のウォーキングレッスンには型通りのマニュアルはなくて、生徒さん一人一人のライフスタイルと履いている靴、履きたい靴を踏まえ、お悩みにお応えするオーダーメイド方式。でも、お悩みの種類はだいたい絞られていて、とくにハイヒールを履かれる方からの質問で、最近一番多いのが「靴と自分の踵が合わない」というものです。

ハイヒールを快適に、美しく履きこなすには靴との一体感が欠かせません。靴の内側の空間と、自分の足が少しの隙間もなく、ぴたりとフィットした状態。そんな一体感のあるハイヒールなら、歩くときに足裏をしっかりとローリングさせられ、足の裏全体にしなやかな筋肉がつきますから、靴とのフィット感がより高くなります

靴とのフィット感が高まると、足指に余計な力を込めたり、ギュッと強張らせなくても歩けるから、外反母趾になりにくくなる。血流の折り返し地点である足指が自由になるから、むくみにくくなる。靴と足との間に余計な空間ができないから、靴擦れを起こしにくくなる。こんなふうに、ハイヒールを履くことを躊躇させるお悩みの、ほとんどすべてが解決してしまいます。

また、足裏をしっかりローリングさせて歩けるということは、体重分散がきちんとでき、足に余計な重力がかかっていないということでもあります。体重を支えるのはあくまで脚、骨盤、ヒップです。足の裏は立ち、歩くときの地面との接地面で、その筋肉は血流をサポートするのがより大きな役割である、と考えてください。そしてその役割は、足裏を伸びやかにローリングさせて歩くことで十分に発揮でき、むくまない、歪まない、痛みのないすっきりと引き締まった足と脚で、颯爽とハイヒールを履きこなすことができる。ですから美脚もハイヒールも、すべては「足裏のローリング」次第なんです。

みなさん、「ローリング」への興味が俄然湧いてきたのではないでしょうか 笑。 私のウォーキングレッスンを受けた方ならご存じのとおり、それ自体は難しいことではありません。ただしきちんとローリングさせて歩くには、準備が3つ必要です。1つは正しい靴選び(vol.11)。次に正しい足入れ(vol.12)、そして正しい体重分散(vol.64〜67)。どれも足の筋肉を伸びやかに使うため、欠かせない要素です。これらについては過去のエッセイでお伝えしていますので、この機会にぜひ読み返してみてくださいね。

さて、準備が整ったら肝心のローリングについて解説しましょう。まず片方の脚をぽん、と放るように前に出したら、踵でしっかりと着地。そこを起点に、足裏の筋肉をゴムのようにしならせながら土踏まず、足指の付け根へと徐々に重心を移動させます。この時、重心が外側へ偏らないよう注意してくださいね。足指の付け根まで来たら後ろ脚で地面を蹴り、体全体を前に押し出しながら、指先を地面からすっと離します(脚を前に出すから進むのじゃなく、後ろ脚で蹴るから前に進む、という点をくれぐれもお忘れなく!)。自然に歩いているときにはローリングの途中で反対の脚が前に出ているので、そちらの足も時間差で同様に。重心は最初に出した足の指先が、地面から離れるのと同時に反対の足に移ります。

これが一連の流れで、この連続で足裏の筋肉はストレッチと鍛えるのとを絶えずくり返し、しっかりと筋肉がついて、冒頭の「靴と自分の踵が合わない」という状態も改善されていくはずです。もちろん、慣れるまでは足裏への意識が必要。でも決して難しくはないでしょう? けれど、3つの準備のどれかが欠けてもローリングは十分にできなくて、まわりを見渡す限り、ほとんどの方ができていません。ですからこれを読んでくださっているみなさんにとっては、ハイヒール姿の美しさで抜きん出る絶好のチャンスです。

ちなみに、ハイヒールでもソールの厚みが1センチ以上あるものはしなりづらく、ローリングが十分にできません。その場合は脚を前に出すとき、股関節をキュッと外側にひねってください。股関節をひねって脚を前に出し、踵で着地して、ヒップから脚、足の筋肉を1本のゴムに見立てて、ぜんぶでギュッと地面を押して前に行く。足裏を十分に伸縮させられないぶん、足首をしっかり動かすことも意識しましょう。この歩き方はソールの厚くないハイヒールやスニーカーを履いているときにも有効で、マスターすると歩くのが楽になってヒップが上がり、股関節を動かすことで血流やリンパの循環もアップするなどいいことずくめです。

パーティシーズンでドレスアップの機会が増えるこれから、足裏の「ローリング」をものにして、ぜひ会場の美しい華になってくださいね。